WRNタンパク質の新たなテロメア制御機能~抗がん剤の薬理効果にも影響か~

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2023-01-20 京都大学

ヒトを含む真核生物の遺伝情報を担う染色体はヒモのような線状で、その末端をテロメアと言います。テロメアは、自然なDNA末端が不必要なDNA傷害反応を引き起こさないように守っています。細胞周期を有糸分裂(M)期に停止させるタキソールやビンブラスチンなどの殺細胞性抗がん剤を使用すると、M期停止中にテロメアの保護が失われて細胞死のシグナルとなる現象(M期テロメア脱保護)が知られていましたが、その分子メカニズムはよくわかっていませんでした。

今回、林眞理 医学研究科客員准教授(兼任:IFOM ETSグループリーダー)、Diana Romero 同研究員(兼:生命科学研究科大学院生)からなるグループは、テロメアの脱保護を促進できる酵素活性をもつWRNヘリケースに着目した解析を進めたところ、驚いたことにWRNは脱保護を促進するのではなく、抑制することがわかりました。この機能にWRNの酵素活性は必要なく、WRNの一部の領域のリン酸化の有無によってこの抑制機能が制御されていることが示唆されました。

分子メカニズムの完全な解明には今後更なる研究が必要ですが、この成果は、M期を阻害する抗がん剤の薬理作用を正確に理解し、その効果を向上させる手法の開発等に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2023年1月12日に、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

文章を入れてください
図 WRNタンパク質の有無によるM期阻害抗がん剤の効果の違い
WRNはM期停止中のテロメア脱保護を抑制する。WRNがない条件では、細胞分裂阻害によるM期テロメア脱保護が亢進する。

研究者のコメント

「”WRNヘリケースはM期テロメア脱保護を促進する”という仮説に基づいて始めた研究ですが、全く正反対の結果が出て驚きました。研究結果や成果をあらかじめ予測することは難しく、予断を排して実験結果と向き合うことこそが研究の醍醐味であることを再確認できました。」

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:林 眞理

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細胞遺伝子工学
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