斜視、早期治療への可能性を拓く

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2018/08/08 国立遺伝学研究所

Protocadherin-mediated cell repulsion controls the central topography and efferent projections of the abducens nucleus

Kazuhide Asakawa, Koichi Kawakami

Cell Reports Volume 24, ISSUE 6, P1562-1572, August 07, 201 DOI:10.1016/j.celrep.2018.07.024

片方の眼が目標とは違う方を向いてしまう斜視は、子どものおよそ2%で発症するといわれています。斜視の原因は環境要因と遺伝要因の両方と考えられていますが、遺伝要因は現在のところ一部しか解明されていません。眼の動きの発達に関わる遺伝子を発見してその働きを理解することは、斜視の適切な治療につながると期待されています。

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の浅川和秀助教らの研究グループは、眼の動きの発達に必要な新しい遺伝子を発見しました。

眼の動きは、脳からの指令を眼を動かす筋肉に伝達することで制御されます。本研究グループは、身体が透明に近い熱帯魚ゼブラフィッシュを実験材料に使うことで、“脳と筋肉のつながり”の全体像を観察する、という長年にわたり困難とされてきた課題を克服しました。この新しく開発した観察法とゲノム編集法などを組み合わせて、脳と筋肉のつながりに必要な遺伝子を探索しました。その結果、プロトカドヘリン(Pcdh17)タンパク質を作る遺伝子の働きを阻害すると、脳の細胞が凝集して、眼の筋肉にまで到達できなくなることを発見しました(図1)。  この研究によって、「脳の細胞が互いに反発しながら筋肉に到達する」、という脳と眼の筋肉のつながりを発達させる新しい仕組みが明らかになりました。プロトカドヘリンは、私たちヒトの脳でも働いていることから、プロトカドヘリンをつくる遺伝子の変異によって眼の動きの発達が停滞し、斜視が発症しやすくなる可能性が考えられます。

本研究成果は、米国のオンライン科学雑誌『Cell Reports』に平成8月7日(米国東部標準時)に掲載されます。

本研究は情報・システム研究機構国立遺伝学研究所の浅川和秀助教と川上浩一教授らの研究チームによっておこなわれました。

また、本研究は科研費補助金(JP15H02370, JP18H04988, JP22700349, JP23115720) 、日本医療研究開発機構ナショナルバイオリソースプロジェクト、上原記念生命科学財団、花王芸術・科学財団、三菱財団、第一三共生命科学研究振興財団の支援を受けておこなわれました。

Figure1

図:
(左)プロトカドヘリンを介した反発力によって、脳と筋肉がつながる。
(右)反発力が十分でないと、脳の細胞が凝集し、筋肉に到達できない。

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