2023-03-09 京都大学
ミミズは落葉落枝の分解者として土壌の形成に重要な役割を果たすとともに、さまざまな動物の餌となり、陸上生態系の生物多様性を支えています。日本を含む東アジアでは、ミミズの大部分はフトミミズ科の種で、中でもアズマフトミミズ属の仲間が多く、ミミズ類全体の80%程度の種数を占めると言われています。この属は日本では140種程度記録されていますが、それらの種の系統関係や起源は分かっていませんでした。
佐藤千佳 理学研究科修士課程学生(研究当時)と曽田貞滋 同教授、念代周子 弘前大学修士課程学生と池田紘士 同准教授(現:東京大学准教授)、長太伸章 国立科学博物館特定研究員、奥崎穣 東京大学講師、南谷幸雄 栃木県立博物館主任研究員らの研究グループは、北海道から沖縄までの日本列島から得られた約200個体のフトミミズ類からミトコンドリアゲノム(ミトゲノム)DNA配列データを取得し、データベースに登録されている中国などのフトミミズ類のDNA配列データとあわせて系統解析を行いました。その結果、琉球列島を含む日本に生息するアズマフトミミズ属は3つの異なる系統群に属すること、本土(九州~北海道)の固有種は、4つの系統群に分かれることが分かりました。
本研究成果は、2023年2月25日に、国際学術誌「Molecular Phylogenetics and Evolution」にオンライン掲載されました。
日本産アズマフトミミズ属のミトゲノムDNAに基づく系統関係。中国、韓国の種を含む。赤丸で囲んだJ1b、J1c、J2c、J3は日本固有の系統群。
研究者のコメント
「私達は日本固有のオサムシ類(オオオサムシ亜属)の種の多様化の背景を解明する目的で、オオオサムシ亜属の幼虫が餌とするフトミミズ類について調べてきました。今回の研究で、とくに落ち葉の下に生息する表層性のアズマフトミミズ属の系統が多様化していることが分かりました。その系統がオオオサムシ亜属の繁栄を支えていたわけです。この研究で、ともに大陸の系統に由来する捕食者と被食者の日本列島での多様化の歴史が分かったことは大きな成果です。今後は、私達の研究をもとにして、日本産フトミミズ類の分子系統解析が進展し、さらにアジアの広い地域でのフトミミズ類の系統進化を解明する研究に発展していくことを期待しています。」(曽田貞滋)
研究者情報
研究者名:曽田 貞滋