犬の特発性てんかんの抑止にドコサヘキサエン酸が効く

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2023-08-02 東京大学

発表のポイント
  • 特発性てんかんの犬に高用量のドコサヘキサエン酸(DHA)を与えると、発作の頻度が減ることを示しました。
  • DHAのてんかん抑制効果は諸説ありますが、本発表の用量・用法では高い効果がありました。
  • 犬の特発性てんかんの新しい治療法として期待されます。
発表概要

東京大学大学院農学生命科学研究科の米澤智洋准教授らによる研究グループは、特発性てんかんの犬(注1)に高用量のドコサヘキサエン酸(DHA、注2)を与えると、発作の頻度が減ることを示しました(下図)。DHAのてんかん抑制効果は諸説ありますが、本発表では少ない実施例ながら高い効果がありました。犬の特発性てんかんの新しい治療法として期待されます。

犬の特発性てんかんの抑止にドコサヘキサエン酸が効く

本報告で経過を観察した各症例の発作頻度の変化について論文のデータをもとにグラフにしたもの
高用量DHAを投与して時間が経つにつれて1か月当たりの発作回数が減少している

発表内容
<背景>

特発性てんかんは、検査しても異常がみつからない原因不明のてんかんのことを指します。飼い犬の1~2%程度が発症するとされています。通常は抗てんかん薬の服用で対症療法を行いますが、それだけでは発作頻度を抑えきれない症例が一定数おり、他の手法が模索されています。本研究グループでは、ドコサヘキサエン酸(DHA)に着目しました。DHAはオメガ3脂肪酸に分類される不飽和脂肪酸のひとつで、細胞膜の流動性を高め、細胞の可塑性に関与していると考えられています。これまでにも犬の特発性てんかんに対してオメガ3脂肪酸を試用した例はありましたが、その効果ははっきりしませんでした。本研究グループでその理由として、投与されたオメガ3脂肪酸に含まれるDHA成分が少なかったこと、投与量が少なかったこと、観察期間が短かったことによると考えました。そこで本研究では、高純度のDHAを、既報より高用量の投与で6か月にわたって観察する臨床試験を計画しました。

<成果>

2019年から2020年に東京大学大学院農学生命科学研究科附属動物医療センターに来院した症例を対象に臨床試験を行いました。特発性てんかんと診断された犬のうち、既存の抗てんかん薬で治療中だが、1か月に2回以上の発作が認められる症例を対象にしました。すでに投与されている抗てんかん薬は変更せず、高純度のDHA製剤をDHAとして50~100 mg/kgで1日2回追加投与し、6ヶ月間観察しました。試験は6例に実施され、6例中4例が6か月の観察期間を完了しました。4例とも投与開始から2~3か月で発作頻度が50%以上減少し、うち3例については5~6か月後には1か月あたり0~1回の発作頻度に減少しました。また、どの症例においても全身状態や血液検査結果に明らかな有害事象は観察されませんでした。

<展望>

今回の結果は、既報より高用量のDHA投与が犬の特発性てんかんの発作頻度を減らすのに役立つ可能性があることを示しています。犬の薬物抵抗性てんかんや、ひいてはヒトのてんかんにおける治療薬としての可能性が期待できます。ただし、本研究は実施例数が少なく、比較試験でもなかったために結論の一般化に限界があります。引き続きの成果の蓄積が望まれます。

発表雑誌
雑誌
Open Veterinary Journal
題名
Effects of high-dose docosahexaenoic acid supplementation as an add-on therapy for canine idiopathic epilepsy: A pilot study
著者
Tomohiro Yonezawa, Cris Niño Bon B. Marasigana, Yuki Matsumiya, Shingo Maeda, Tomoki Motegi, Yasuyuki Momoi
DOI
10.5455/OVJ.2023.v13.i7.14
URL
https://www.openveterinaryjournal.com/index.php?fulltxt=147025&fulltxtj=100&fulltxtp=100-1679374785.pdf
用語解説

注1 犬の特発性てんかん
検査しても異常がみつからない原因不明のてんかん。飼育されている犬の約1%程度が発症するとされている。病歴、血液検査、神経学的検査、MRI検査、脳脊髄液検査などによって診断される。

注2 ドコサヘキサエン酸(DHA)
魚の脂などにおおく含まれている、オメガ3脂肪酸のひとつ。生体内では大脳皮質、神経、網膜などに多く含まれており、細胞膜の流動性を高め、細胞の可塑性に関与していると考えられている。

問い合わせ先

〈研究に関する問合せ〉
東京大学大学院農学生命科学研究科
准教授 米澤 智洋(よねざわ ともひろ)

〈報道に関する問合せ〉
東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部
事務部 総務課総務チーム 広報情報担当

医療・健康
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