T細胞性急性リンパ性白血病の増殖因子を発見~新規治療法開発への手がかりに~

ad

2023-11-14 京都大学

急性白血病と呼ばれる血液腫瘍のうち、成人では約5%、小児では約10-15%がT細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)に分類されます。治療成績は比較的良好で約80%の長期生存率が得られていますが、治療が奏功しない患者さんがいることも事実です。これらの患者さんの治療には既存の方法とは異なる全く新しい治療法の開発が求められており、T-ALLの病態の詳細な解析が欠かせません。

青木一成 医生物学研究所助教、遊佐宏介 同教授らの研究グループは、T-ALL細胞が骨髄内に留まり増殖する分子メカニズムとして、遺伝子発現の制御に関わるクロマチンリモデリング因子の一つcBAF複合体が重要な役割を担っていることを明らかにしました。cBAF複合体はそのクロマチンリモデリング活性によりがん原性転写因子であるRUNX1の標的遺伝子への結合を促進しており、白血病細胞の増殖に対し正に関与していました。一方、cBAF複合体のクロマチンリモデリング活性を阻害する薬剤はRUNX1のゲノムDNAからの乖離と増殖抑制を誘導すること、白血病マウスモデルにおいても増殖抑制効果を示すことを確認しました。本研究はT-ALLに対する新しい治療法開発の手がかりとなる成果で、今後の研究が期待されます。

本研究成果は、2023年11月3日に、国際学術誌「Blood」にオンライン掲載されました。

T細胞性急性リンパ性白血病の増殖因子を発見~新規治療法開発への手がかりに~T-ALL細胞では、cBAF複合体がRUNX1結合領域を開いた状態に維持しRUNX1の結合を促すことで病態が維持されている。cBAF機能を抑制するとRUNX1は結合できず、標的遺伝子の発現が低下する。これによりCXCL12応答や細胞増殖が低下し、治療効果が期待される。

詳しい研究内容について

T細胞性急性リンパ性白血病の増殖因子を発見―新規治療法開発への手がかりに―

研究者情報

研究者名:青木 一成
研究者名:遊佐 宏介

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1182/blood.2023020857

【書誌情報】
Kazunari Aoki, Mizuki Hyuga, Yusuke Tarumoto, Gohei Nishibuchi, Atsushi Ueda, Yotaro Ochi, Seiichi Sugino, Takashi Mikami, Hirokazu Kobushi, Itaru Kato, Koshi Akahane, Takeshi Inukai, Akifumi Takaori-Kondo, Junko Takita, Seishi Ogawa, Kosuke Yusa (2023). Canonical BAF complex regulates the oncogenic program in human T-cell acute lymphoblastic leukemia. Blood.

医療・健康
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました