2023-11-20 京都大学
繁殖期になると水場に集まり盛んに鳴きだすカエル類は、目で見るよりも耳をすませるほうが効率的に探すことができます。そのため生息調査では音声レコーダーを用いた音響モニタリングが広く実施されてきましたが、録音データはすぐに膨大になり解析しきれなくなることが課題でした。
木村楓 理学研究科博士課程学生および曽田貞滋 名誉教授の研究グループは、近年発達したAI技術を用いてカエルの鳴き声を自動で判別し、繁殖活動のモニタリングに用いる手法を確立しました。鳴き声を学習させたAIは、調査地に現れた5種のカエルを90%以上の高精度で判別できました。また調査地においてカエルをほぼ毎日数えたところ、鳴き声の活発さを表す指標が高い日ほど出現個体数が多いことが確認されました。ただし個体数が少ない種では検出が難しくなることや、鳴き声の活発さが産卵状況と必ずしも強く相関しないといった課題も見つかりました。今後AIを利用した野外調査が活発化するなか、カエルの音響モニタリングを有効に実施するために本研究が土台の一つとなると期待されます。
本研究成果は、2023年11月17日に、国際学術誌「Ichthyology & Herpetology」にオンライン掲載されました。
喉を大きく膨らませて鳴くニホンアマガエル(撮影:木村楓)
研究者のコメント
「本研究のポイントは、最新の技術を用いるだけでなく、100日以上夜の田んぼでカエルを数えながら歩く地道な調査も実施したことにより、録音データと野外の生物の活動を結びつけることができたことです。またその過程でAIの利便性を身をもって実感しました。AIを研究助手として活用することで、これまで個人では不可能だったほど沢山の野外観察ができることを楽しみにしています。」(木村楓)
詳しい研究内容について
カエルの鳴き声をAIで識別する―繁殖活動の高効率なモニタリング調査に向けて―
研究者情報
研究者名:曽田 貞滋
書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.1643/h2023018
【書誌情報】
Kaede Kimura, Teiji Sota (2023). Evaluation of Deep Learning-Based Monitoring of Frog Reproductive Phenology. Ichthyology & Herpetology, 111(4), 563-570.