院外心停止患者における膜型人工肺を活用した蘇生~膜型人工肺を活用した蘇生と生存率向上との関連~

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2023-11-21 京都大学

近年、心停止患者の蘇生に体外式膜型人工肺(ECMO)を用いた蘇生、ECPR(Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation)戦略が注目されています。これまで複数の研究でECPRと予後との関連性が報告されていましたが、ECPRの治療開始までの時間が考慮された研究はありませんでした。この度、岡田遥平 医学研究科研究員、石見拓 同教授および小向翔 大阪大学助教、北村哲久 同准教授らを含む、大阪の救命救急センターを中心とする共同研究グループは、時間依存性傾向スコアとリスクセットマッチングという統計手法を用いて、ECPR開始までの時間を考慮した解析を行い院外心停止患者に対するECPRと予後との関連を検証しました。

本研究では、日本救急医学会多施設共同院外心停止レジストリ(JAAM-OHCAレジストリ)を用いて、全国の成人の院外心停止患者を対象にしました。対象患者を除細動の適応となる波形(心室細動など)の患者と除細動の適応とならない波形の患者に分け、時間依存性傾向スコアとリスクセットマッチングという手法を用いて、ECPR治療が行われた患者(ECPR群)と同じ時間にECPR治療が行われなかった患者(対照群)を対応した患者のセットとして、患者の背景因子などを揃えて解析しました。1,826例の除細動適応波形の患者(ECPR群:913例、対照群:913例を含む)および除細動が適応外の740例の患者(ECPR群:370例、対照群:370例)を解析すると、ECPR群における生存のオッズ比は、除細動適応患者では1.76 [95%信頼区間:1.38–2.25]、除細動の適応外の患者では5.37 [95%信頼区間:2.53–11.43] で、対照群と比較して増加していました。良好な神経学的転帰に関しては、ECPR群におけるオッズ比は、除細動適応波形の患者では1.11 [95%信頼区間:0.82–1.49]、除細動の適応外の患者では4.25 [95%信頼区間:1.43–12.63] でした。本研究の結果は、院外心停止患者におけるECPRの潜在的な有効性を示しています。

本研究成果は、2023年11月15日に、国際学術誌「Critical Care」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント

「筆頭著者である岡田は、救急医として臨床の現場で院外心停止患者の蘇生に携わってきました。ECPRはその転帰改善の効果が期待される一方で、その有効性のエビデンスは不十分でした。今回の研究では、全国の院外心停止のデータを用いてECPRが患者の生存に寄与する可能性が示されました。この結果がECPRを蘇生戦略の議論の材料となり、患者の救命、社会復帰に資することを期待しています。」(岡田遥平)

「本研究は、京都大学大学院医学研究科と大阪大学大学院医学研究科、大阪の救命救急センターを含む共同研究グループによる研究であります。我々の研究チームが基盤となって構築した全国の多施設共同院外心停止のレジストリデータを元にECMOを用いた治療戦略を検討した意義深い研究です。本研究を通じて院外心停止患者の蘇生戦略について議論され、さらなる本邦の院外心停止患者の救命、予後改善へと発展していくことを期待しております。」(石見拓)

詳しい研究内容について

院外心停止患者における膜型人工肺を活用した蘇生―膜型人工肺を活用した蘇生と生存率向上との関連―

研究者情報

研究者名:岡田 遥平
研究者名:石見 拓

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