植物の”水道”の形成を制御するタンパク質の機能を明らかに ~細胞壁形成の制御機構の解明へ大きな前進~

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2024-01-04 名古屋大学

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科の貴嶋 紗久 研究員(当時※1)、佐々木 武馬 助教、高谷 彰吾 研究員、浅野 僚介 学部生、小田 祥久 教授の研究グループは、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 遺伝形質研究系の比嘉 毅 特任研究員(当時※2)、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生命創成探究センターの近藤 洋平 助教、国立研究開発法人理化学研究所 環境資源科学研究センターの若崎 眞由美 テクニカルスタッフⅡ、佐藤 繭子 技師、豊岡 公徳 上級技師、奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科の出村 拓 教授、京都先端科学技術大学 バイオ環境学部の福田 裕穂 学部長(当時※3)との共同研究により、植物の水の輸送路である道管の形成に必要な新たな機構を明らかにしました。
研究グループは、シロイヌナズナの道管においてMIDD1タンパク質が液―液相分離注5)を介して凝集体を形成し、細胞壁形成の足場となる微小管を分解する機能をもつことを突き止めました。このMIDD1タンパク質の機能が細胞壁の形成を局所的に抑制することで、道管の水の輸送路を確保していることを明らかにしました。この知見は植物の細胞壁形成の制御機構の理解を飛躍的に深めるものです。
植物の細胞を覆う細胞壁は、細胞の形の制御、水分・養分の輸送経路の確保など多様な機能を担います。細胞壁形成の適切な制御は植物細胞が機能を発揮する上で重要です。本研究の知見は、細胞壁形成を人為的に制御し、植物の形態や硬さを制御する新技術につながることが期待されます。また、本研究で明らかとなった液―液相分離を介して微小管を分解する機構は、真核生物に共通して存在する微小管の制御機構の解明に大きく貢献すると考えられます。
本研究成果は2024年1月3日午後7時(日本時間)付イギリスの科学誌「Nature Plants」誌で公開されます。

【ポイント】

・細胞壁注1)形成の制御が植物細胞の機能と植物の生育に重要である。
・タンパク質MIDD1注2)が凝集して微小管注3)を分解し、細胞壁の形成を局所的に抑制することで道管注4)を形成する、という仕組みを明らかにした。
・細胞壁形成、および真核生物が広くもつ微小管の、制御機構の理解が大きく前進した。

※1 2023年4月より国立研究開発法人 産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 研究員
※2 2022年4月より国立大学法人 東京大学 総合文化研究科 特任研究員
※3 2023年4月より公立大学法人 秋田県立大学 学長

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

【用語説明】

注1)細胞壁:
植物の細胞膜の外側に形成され、植物細胞の形態や機能を決定づける構造。主にセルロース、ヘミセルロース、ペクチンから成る。道管や仮道管、繊維の細胞壁にはこれらに加えてリグニンが沈着する。

注2)タンパク質MIDD1:
維管束植物が保有するタンパク質の一つ。N末端に天然編成道管での細胞壁形成および葉での細胞分裂の制御に関わっていることが報告されている。

注3)微小管:
チューブリンと呼ばれるタンパク質が重合することで作られる直径24ナノメートルのチューブ状構造。細胞分裂や細胞内輸送など多様な機能を担う。植物細胞では細胞表層に並び、細胞壁の主成分であるセルロースの合成を導いている。

注4)道管:
植物が根から吸収した水分と養分を、植物の地上部に運ぶための管状の組織。

注5)液―液相分離:
2種類の液体が水と油のように分離する現象。細胞内では様々な分子が液―液相分離により液滴のような凝集体を形成し、細胞の機能を支えている。

【論文情報】

雑誌名:Nature Plants
論文タイトル:Microtubule-associated phase separation of MIDD1 tunes cell wall spacing in xylem vessels in Arabidopsis thaliana
著者:比嘉 毅、*貴嶋 紗久、*佐々木 武馬、*高谷 彰吾、*浅野 僚介、近藤 洋平、若崎 眞由美、佐藤 繭子、豊岡 公徳、出村 拓、福田 裕穂、*小田 祥久 (*名古屋大学関係者)
DOI: 10.1038/s41477-023-01593-9
URL: https://www.nature.com/articles/s41477-023-01593-9

【研究代表者】

大学院理学研究科 小田 祥久 教授

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