2024-03-04 京都大学
同種造血幹細胞移植の成功率を高めるために、従来は患者とヒト白血球抗原(HLA)の適合したドナーが理想的とされてきましたが、HLA適合ドナーを得られない症例も多く、代替ドナーを用いた移植法が開発されてきました。そのなかで、臍帯血移植に加えて近年移植後シクロホスファミドを用いたHLA半合致移植(PTCyハプロ移植)が広く行われるようになっています。しかし両者のどちらが優れているかは不明でした。
城友泰 医学部附属病院助教、新井康之 同助教(病院講師、検査部・細胞療法センター副センター長)、熱田由子 日本造血細胞移植データセンター長(兼:愛知医科大学教授)らの研究グループは、日本全国で実施された造血幹細胞移植の一元管理プログラム(TRUMP)に登録された急性リンパ芽球性白血病(ALL)1999症例のデータを用いて、PTCyハプロ移植と臍帯血移植の成績を比較しました。その結果、ALL全体においてはPTCyハプロ移植では臍帯血移植よりも移植後合併症による死亡が少ないものの、移植後の白血病再発が多く、結果として全生存は同等でした。一方で第一寛解期での移植に限定すると、PTCyハプロ移植でも再発のリスクは少なく、かつ移植後合併症が臍帯血移植よりも少なく、全生存が高い結果でした。またPTCyハプロ移植では、移植する幹細胞の数が多いと移植成績が良いことが分かりました。病状に応じて最適なドナーと移植法を選択することで、ALLに対する移植の成績向上につながる可能性があります。
本研究成果は、2024年2月29日に、国際学術誌「British Journal of Haematology」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「臍帯血移植に加えてPTCyハプロ移植が開発されたことで、HLA適合ドナーが得られない患者さんにも同種造血幹細胞移植を実施できるようになってきましたが、ALLについて、いずれの移植がより良いかは明らかでありませんでした。今回、成人ALLについて両者を比較し、臍帯血移植では治療合併症が多いことが、PTCyハプロ移植では再発が多いことが、それぞれ問題として明らかになりました。今回得られた知見は、各患者さんが有する疾患の性質や患者の病状を考慮して移植ドナーと移植法を選択することの重要性が示唆され、移植ソース選択の最適化と移植後予後改善に寄与するものと期待しております。」(城友泰、新井康之)
詳しい研究内容について
急性白血病におけるHLA半合致移植と臍帯血移植の比較 ―症例に応じた最適な造血幹細胞移植を目指して―
研究者情報
研究者名:城 友泰
研究者名:新井 康之