国内で最も絶滅リスクの高いチョウ、オガサワラシジミの繁殖途絶の原因を解明~近親交配による遺伝的多様性の減少が、繁殖の失敗につながっていた~

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2024-07-12 兵庫県立大学

国内で最も絶滅リスクの高いチョウ、オガサワラシジミの繁殖途絶の原因を解明~近親交配による遺伝的多様性の減少が、繁殖の失敗につながっていた~

中濱直之(兵庫県立大学自然・環境科学研究所准教授 兼 兵庫県立人と自然の博物館主任研究員)、小長谷達郎(奈良教育大学理科教育講座准教授)、上田昇平(大阪公立大学大学院農学研究科准教授)、平井規央(大阪公立大学大学院農学研究科教授)、矢後勝也(東京大学総合研究博物館講師)、矢井田友暉(神戸大学大学院人間発達環境学研究科大学院生)、丑丸敦史(神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授)、井鷺裕司(京都大学大学院農学研究科教授)らの研究グループは、国内で最も絶滅リスクの高いチョウであるオガサワラシジミの繁殖途絶の原因を解明しました。

オガサワラシジミは、小笠原諸島にのみ分布する日本固有のチョウです。小笠原では元々多数の個体が生息していましたが、グリーンアノールによる捕食などの外来生物の影響により、近年大きく数を減らしており、環境省レッドリストで絶滅危惧IA類、種の保存法で国内希少野生動植物種に指定されています。2016年より多摩動物公園などで生息域外保全が開始されたものの、野生環境では2020年を最後に生きた個体が確認されておらず、生息域外保全も2020年に繁殖途絶をしてしまっています。現在は生きた個体が確認されていないことから、国内で最も絶滅の可能性の高いチョウと言われております。

本研究では、オガサワラシジミが繁殖途絶に至った経緯を集団遺伝学的な背景から明らかにしました。遺伝的解析の結果、本種は生息域外保全の世代を重ねるにつれて近親交配が進むとともに遺伝的多様性が急速に減少しており、それに伴って有核精子数や孵化率が顕著に減少していました。こうした近親交配に伴う遺伝的多様性の低下によって繁殖成功が低下することは「近交弱勢」と呼ばれます。本種は生息域外保全の過程で近交弱勢が生じた結果、繁殖途絶に至ったと結論付けられました。本研究は、各世代の遺伝情報と繁殖形質の情報を組み合わせて近交弱勢を実証した重要な成果と言えます。また、本種の繁殖途絶の過程の原因が究明できたことで、他の絶滅危惧種の生息域外保全の際に、近交弱勢を引き起こさないための方針策定ができると期待されます。本研究成果は2024年7月12日0時(日本時間)に、国際科学誌「Biological Conservation」の電子版に掲載されます。

研究詳細

別添のとおり

論文情報
  1. タイトル
    Road to extinction: archival samples unveiled the process of inbreeding depression during artificial breeding in an almost extinct butterfly species
  2. 著者名
    Naoyuki Nakahama,Tatsuro Konagaya,Shouhei Ueda,Norio Hirai,Masaya Yago,Yuki A. Yaida,Atushi Ushimaru,Yuji Isagi
    中濱直之(兵庫県立大学自然・環境科学研究所准教授 兼 兵庫県立人と自然の博物館主任研究員)、小長谷達郎(奈良教育大学理科教育講座准教授)、上田昇平(大阪公立大学大学院農学研究科准教授)、平井規央(大阪公立大学大学院農学研究科教授)、矢後勝也(東京大学総合研究博物館講師)、矢井田友暉(神戸大学大学院人間発達環境学研究科大学院生)、丑丸敦史(神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授)、井鷺裕司(京都大学大学院農学研究科教授)
  3. 雑誌・号・doi
    雑誌:Biological Conservation
    巻・号: 未定
    DOI: 未定
問い合わせ先

兵庫県立大学自然・環境科学研究所 准教授
兵庫県立人と自然の博物館 主任研究員
中濵直之

生物化学工学
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