ナンヨウテナガエビの追加記録と新規識別形質を報告

ad

2024-08-20 国立遺伝学研究所

ナンヨウテナガエビMacrobrachium ustulatumはザラテテナガエビ Macrobrachium australeに形態的に類似した淡水性の十脚甲殻類で、2017年に有効種として再記載されるまでザラテテナガエビのシノニムとされていました。両種とも西太平洋域の広域に分布しており、分布の北限は日本です。ザラテテナガエビは主に琉球列島に分布し、本州でもしばしば発見されている、いわゆる普通種です。一方、ナンヨウテナガエビはこれまでに国内から2個体のみしか得られていないため、本種の日本における分布や生息環境に関する情報は不足していました。

この度、生態遺伝学研究室の福家悠介研究員、琉球大学大学院理工学研究科の佐藤大義氏、沖縄県石垣市の清水直人氏、東京大学大学院理学系研究科の乾直人氏の研究グループは、琉球列島の新産地を含む複数地点から得られたナンヨウテナガエビ10個体を報告しました。さらに、標本検討の過程で明らかになった新規判別形質、すなわちナンヨウテナガエビはザラテテナガエビと比較して太い胸脚を持つことを報告しました。著者らの定性的な観察では,同一河川内でもナンヨウテナガエビは緩やかな流れのある環境を、ザラテテナガエビは淀んだ環境に生息する傾向が確認されており、ナンヨウテナガエビにみられる頑強な胸脚は流水環境において適応的な形質である可能性が示唆されました。

ナンヨウテナガエビの追加記録と新規識別形質を報告

図:ナンヨウテナガエビ(上)近縁種ザラテテナガエビ(下)。著者ら撮影。


Additional records of the freshwater prawn Macrobrachium ustulatum (Crustacea: Decapoda: Palaemonidae) from the Ryukyu Islands, Japan

Yusuke Fuke, Taigi Sato, Naoto Shimizu, Naoto Inui

Cancer (2024)  33: 41–46. DOI:10.18988/cancer.33.0_41

生物化学工学
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました