2018/09/28 京都大学
斎藤通紀 医学研究科教授(兼・物質ー細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)連携PI、iPS細胞研究所主任研究者)、山城知佳 同博士課程学生(技術補佐員)らの研究グループは、ヒトiPS細胞から誘導した、すべての精子と卵子の起源となる細胞「始原生殖細胞様細胞 」から、卵子のもととなる「卵原細胞」 を作出することに、世界で初めて成功しました。
本研究成果は、2018年9月21日に、米国の科学誌「Science」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
ヒトiPS細胞から卵子のもととなる卵原細胞を、試験官内で誘導できるようになりました。今後は、卵母細胞、ひいては卵子へと分化成熟させる技術の開発に取り組み、ヒト雌性生殖細胞の正常な発生機構への理解を一層深めたいと考えています。
そこから得られた知見が、ヒトにおける遺伝情報継承機構の解明や、不妊症の原因および遺伝病の発症機序の究明に役立てられることを期待しています。
概要
卵原細胞とは、発生7週目頃のヒト胎子から新生子にまで存在する、卵母細胞(胎児期に卵原細胞から分化し、減数分裂中にある雌性生殖細胞)に分化を開始する直前の細胞です。これまで本研究グループは、ヒトiPS細胞から始原生殖細胞様細胞の誘導を報告してきましたが、ヒト始原生殖細胞様細胞をさらに分化させる技術の開発が望まれてきました。
本研究グループは、ヒト始原生殖細胞様細胞を、マウス胎仔卵巣の体細胞と共に約3ヶ月間培養することにより、卵原細胞へと分化させることに成功しました。これは、ヒト卵原細胞の作出に成功した世界で初めての成果です。
本研究成果は、ヒト生殖細胞の発生機構の理解を促進し、ヒト卵原細胞から卵母細胞、さらに卵子を誘導する研究の基盤を築くもので、将来的には不妊症の原因解明など、生殖医療の発展に役立つことが期待されます。
図:ヒトiPS細胞から卵原細胞を作出するための実験手順
詳しい研究内容について