2025-02-04 東京大学
東京大学大学院薬学系研究科の伊藤慶特任研究員(研究当時)、畠星治特任講師、北川大樹教授、東京大学大学院医学系研究科の坂本寛和助教らの研究グループは、ミクロな細胞内構造「中心小体」の形成サイクルを詳細に解明しました。
中心小体は、細胞分裂時に紡錘体の極を形成する細胞小器官「中心体」の核となる構造です。直径200nm、長さ400nm程度の微小な円筒状の構造であり、細胞周期ごとに一度、既存の中心小体(母中心小体)の側面で新しい中心小体(娘中心小体)が形成されます。新たに形成された娘中心小体は、細胞分裂が完了すると母中心小体から分離し、次の細胞周期では独立した中心体の核として機能します。しかし、この「娘」が「母」とどのように結び付いており、どのように分離にいたるのかは、これまで明らかにされていませんでした。
本研究では、母中心小体と娘中心小体が三つの異なる分子メカニズムによって互いに結合していることを初めて明らかにしました。さらに、膨張顕微鏡法(Expansion Microscopy)を用いた高解像度観察により、細胞周期に伴う娘中心小体の段階的な成熟過程と、成熟に伴い母中心小体からの結合が一つずつ外されていくプロセスを解明しました。がんにおける中心小体の異常増加の原因解明や、新たな治療法への応用が期待されます。
論文情報
Kei K Ito, Kasuga Takumi, Kyohei Matsuhashi, Hirokazu Sakamoto, Kaho Nagai, Masamitsu Fukuyama, Shohei Yamamoto, Takumi Chinen, Shoji Hata*, Daiju Kitagawa*, “Multimodal mechanisms of human centriole engagement and disengagement,” The EMBO Journal: 2025年2月4日, doi:10.1038/s44318-024-00350-8.
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