細胞建築研究室・木村研究室
Scaling relationship between intra-nuclear DNA density and chromosomal condensation in metazoan and plant.
Hara Y, Adachi K, Kagohashi S, Yamagata K, Tanabe H, Kikuchi A, Okumura S-I, Kimura A.
Chromosome Science, 19, 43-49 (2016). DOI:10.11352/scr.19.43
真核生物の染色体の基本的な構造は種を超えて保存されているため、多くの遺伝情報(塩基対の長さ)を持つ生物種は、その量に比例して、細胞内の染色体の物理的な長さも長いと思われるかもしれません。しかし、実際はそう単純ではありません。国立遺伝学研究所の木村暁教授は、山口大学、北里大学、千葉大学、近畿大学、総合研究大学院大学(総研大)の研究者と共同で、総研大学融合プロジェクト、および情報・システム研究機構未来投資プロジェクトを遂行するチームを組織し、様々な生物種を用いて、DNAの量、染色体の物理的な長さ、細胞核の大きさなどを比較しました。その結果、間期核内の密度と、分裂期染色体の凝縮度の間に、種を超えた相関関係があることを見出しました。DNAの量が増えても、染色体の長さは比例して長くなるわけではなく、DNA密度が高くなれば、その分、分裂期染色体はより凝縮度を増すために、分裂期染色体の長さはそれほどは長くならないのです。研究チームの定量的解析は、種間による分裂期の染色体の長さの違いは、核の表面積と比例的な関係にあることを示唆しました。この関係は、細胞が分裂する際に、分裂板と呼ばれる領域の中に染色体を収納するのに重要ではないかと推察されます。本研究は、進化の過程で染色体の大きさや凝縮度に対して種を越えた制約がかかっていることを示唆し、今後の研究の足がかりになると期待されます。
図:染色体の凝縮度と細胞核内のDNA密度との種を超えた相関関係(本論文の図1)。染色体の凝縮度を細胞核内のDNA密度に対してプロットした両対数グラフ。本研究で測定した生物種は色のついた四角で示されている。