抗がん活性ペプチド系天然物ヤクアミドBの効率的固相全合成に成功
2020-01-23 東京大学
デヒドロペプチド系天然物ヤクアミドBの固相全合成
新たに確立した連結法で、アミノ酸残基に二重結合を含むヤクアミドBを固相上で効率的に化学合成することに成功した。
© 2020 Hiroaki Itoh, Kensuke Miura, Koichi Kamiya, Tomoya Yamashita, Masayuki Inoue
東京大学大学院薬学系研究科天然物合成化学教室の伊藤寛晃助教、三浦健介大学院生、神谷光一大学院生、山下智也博士、井上将行教授は、抗がん活性デヒドロペプチド系天然物ヤクアミドBの固相全合成に初めて成功しました。本研究成果は、2020年1月13日付けで「Angewandte Chemie International Edition」(電子版)に掲載されました。
樹脂上でアミノ酸を連結するFmoc固相合成法は、簡便にペプチドを調製する方法として現在広く用いられています。しかしながら、自然界に存在する生物由来ペプチド(天然物)には、通常のペプチドよりも複雑な構造を持つものも多く、興味深い生物活性を示すにもかかわらず、それらの固相合成法は未だ発展途上です。特に、デヒドロペプチドと呼ばれるアミノ酸残基中に二重結合を含むペプチド群の一般的固相合成法は確立されていませんでした。
研究グループは、複雑な構造を持つデヒドロペプチド系天然物であり、強力な抗がん活性を示すヤクアミドBの固相全合成に初めて成功しました。この合成では、通常のペプチド固相合成では得られないデヒドロペプチド構造を、無痕跡型Staudingerライゲーションと呼ばれる反応を応用して効率的に構築しました。
今回確立した方法は、Fmoc固相合成法をベースに簡便な操作でデヒドロペプチドの全体構造を構築できるため一般性が高く、今後の応用が期待されます。
「固相合成は、その利便性からペプチドを調製する目的で広く用いられていますが、ヤクアミドBのようなデヒドロペプチドを固相上で構築するためには、通常のペプチド合成では生じ得ない複数の課題を同時に解決する必要がありました」と井上教授は話します。「ヤクアミドBの固相全合成のために今回新たに確立した方法は、多様な天然ペプチドの合成へも応用可能です。この研究が、ペプチド関連研究の発展へ繋がることを期待しています」。
論文情報
Hiroaki Itoh, Kensuke Miura, Koichi Kamiya, Tomoya Yamashita, Masayuki Inoue, “Solid-Phase Total Synthesis of Yaku’amide B Enabled by Traceless Staudinger Ligation,” Angewandte Chemie International Edition: 2020年1月13日, doi:10.1002/anie.201916517.
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関連リンク
関連教員
伊藤 寛晃 / 助教 / 大学院薬学系研究科
井上 将行 / 教授 / 大学院薬学系研究