ゲノム獣医療への応用を目指して
2020-05-22 国立遺伝学研究所
AnAms1.0: A high-quality chromosome-scale assembly of a domestic cat Felis catus of American Shorthair breed
Sachiko Isobe, Yuki Matsumoto, Claire Chung, Mika Sakamoto, Ting-Fung Chan, Hideki Hirakawa, Genki Ishihara, Hon-Ming Lam, Shinobu Nakayama, Shigemi Sasamoto, Yasuhiro Tanizawa, Akiko Watanabe, Kei Watanabe, Masaru Yagura, Yasukazu Nakamura
BioRχiv Posted May 19, 2020. DOI:10.1101/2020.05.19.103788
アニコム先進医療研究所株式会社、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所、公益財団法人・かずさDNA研究所および香港中文大学(香港)は共同で、アメリカンショートヘア種のイエネコの全ゲノム解析を、19本の染色体レベルでほぼ全長、高精度で行うとともに、既存のアビシニアン種のゲノム構造との比較を行いました。
アメリカンショートヘア種は国内だけでなく、世界的にも人気のある猫種の一つです。これまでイエネコのゲノム配列は、遺伝的に均一なアビシニアン種でのみ調べられており、また、未解明のゲノム構造もあることから、利用できる塩基配列情報が限られていました。
今回の研究で、アメリカンショートヘア種の全ゲノム配列が染色体レベルで明らかになったことで、アメリカンショートヘア種に特徴的な疾患や形質に関わる遺伝子の研究だけでなく、ネコの健康を守るためのゲノム獣医療に繋がる研究を一層進めることができます。
本研究成果は、BioRχivにおいて5月20日(水)にオンライン公開されました。
遺伝研の貢献
国立遺伝学研究所のグループは伴侶動物の個別化医療ならびに予防医療の確立を目的とした、最高精度の本イエネコゲノム塩基配列決定プロジェクトの全体像の提案と、決定されたゲノム塩基配列と転写配列を組み合わせた遺伝研スーパーコンピュータを活用した網羅的な遺伝子発見ならびにゲノムデータベースCats-I の構築に貢献しました。
本研究により得られた情報は、データベースCats-I: Cats’ genome Informaticsでご覧いただけます。
図: 従来型の獣医療では、どの個体にも同じ治療を行っており、治療法によって効果がでないネコも存在していました。ゲノム獣医療では、ゲノム情報に基づいて個体の体質に適した治療を行うことで、より効果的、効率的に獣医療を進めることが可能になります。