環境負荷の低い新冷媒の状態方程式を開発し世界標準のデータベースに登録

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新冷媒の実用化に大きく貢献

2018-05-25 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構,国立大学法人九州大学

NEDOプロジェクトにおいて、九州大学が開発した新たな低GWP冷媒の状態方程式が、世界標準の熱物性データベースであるアメリカ国立標準技術研究所(NIST)のREFPROPに登録されました。

本データベースに登録されることで、新たな低GWP冷媒を用いた冷凍空調機器の性能評価や最適設計が可能となり、新冷媒の実用化に大きく貢献することが期待されます。

1.概要

現在、冷凍空調機器用冷媒として使用されているHFC※1などの代替フロン※2は、温室効果が高く、地球温暖化を促進するという問題点が指摘されています。HFCの市中ストック量※3の増加に伴い、大気中への排出量も増加し、その温室効果の高さによる環境影響が問題となっています。こうした背景のもと、温室効果ガス排出量削減を強化するために、パリ協定などの地球温暖化対策に係る国際的な規制が進み、現在使用しているHFC冷媒が使用できなくなる可能性があります。

そこでNEDOは、関連プロジェクト※4において、業務用や家庭用のエアコンを対象に、冷媒や機器の開発を行うとともに、新たな低GWP※5冷媒の性能や安全性評価に取り組み、環境負荷の低い空調機器の開発を進めてきました。新たな冷媒を用いた冷凍空調機器の性能評価や最適設計を行うためには、その冷媒の熱力学的性質を表現した数学モデル(状態方程式)が必要不可欠であり、信頼性の高い状態方程式は、高精度に測定された熱物性値(臨界定数、密度、飽和蒸気圧、比熱、音速等)に基づき開発されるものです。これらのプロジェクトにおいて、国立大学法人九州大学は、HFCに替わる新たな低GWP冷媒(HFO-1123、HCFO-1224yd(Z))※6の実用化を目指した冷凍空調機器の性能評価や最適設計において必要となる熱物性について精密な測定をし、それらに基づいた高精度な状態方程式を開発しました。

今般、NEDOプロジェクトにおいて、九州大学が開発した新たな低GWP冷媒(HFO-1123、HCFO-1224yd(Z))の状態方程式が、世界標準の熱物性データベースであるアメリカ国立標準技術研究所(NIST)のREFPROP※7(第10版)に登録されました。

本データベースに登録されることで、HFO-1123およびHCFO-1224yd(Z)の熱物性値のみならず、既存冷媒とこれらの冷媒との混合冷媒の熱物性値も簡便に計算できるようになり、新たな低GWP冷媒を用いた冷凍空調機器の性能評価や最適設計が可能となり、新冷媒の実用化に大きく貢献することが期待されます。NEDOは、引き続き低GWP冷媒実用化の取り組みの成果を展開し、環境負荷が圧倒的に低い冷凍空調機器の早期実現に貢献していきます。

【注釈】
※1 HFC

HFC(ハイドロフルオロカーボン)は、オゾン層破壊効果は無いものの強力な温室効果ガスであり、パリ協定において排出削減の対象となっている。

※2 代替フロン

オゾン層破壊源となる塩素を含まないHFC(ハイドロフルオロカーボン)などの化合物。

※3 市中ストック量

市中で稼働している冷凍空調機器に使用されている冷媒の総量。

※4 関連プロジェクト

「高効率ノンフロン型空調機器技術の開発」(2011~2015年度)
「高効率低GWP冷媒を使用した中小型空調機器技術の開発」(2016~2017年度)

※5 GWP

地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)。CO2を1として、温暖化影響の強さを表す。

※6 低GWP冷媒(HFO-1123、HCFO-1224yd(Z))

HFO(ハイドロフルオロオレフィン)およびHCFO(ハイドロクロロフルオロオレフィン)は、いずれも二重結合の特徴を持つフッ素化合物であり、地球温暖化係数がフロンや代替フロンよりも圧倒的に低い特徴がある。HFO-1123およびHCFO-1224yd(Z)は、いずれもNEDOプロジェクト「高効率ノンフロン型空調機器技術の開発」(2011~2015年度)で、旭硝子株式会社が開発した冷媒でありGWPが極めて低い。

※7 REFPROP冷媒熱物性データベースソフトウエア。世界標準の熱物性データベースとして広く用いられている。

問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 環境部 担当:神戸、須澤、阿部(正)
国立大学法人九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)
附属次世代冷媒物性評価研究センター(NEXT-RP) 教授 東 之弘

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:高津佐、藤本、坂本

(九州大学およびI2CNERの本件に関するHP掲載等についての問い合わせ先)

九州大学I2CNER 支援部門 渉外グループ

有機化学・薬学
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