RSウイルスの再感染で抗原部位にアミノ酸置換を発見

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研究開発中の製剤の抗ウイルス効果に影響を及ぼす可能性

2018-05-25 東北大学大学院医学系研究科,日本医療研究開発機構

発表のポイント
  • RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)に再感染した4名の小児から検出されたウイルスは、抗原タンパク(FタンパクとGタンパク)の特定の部位にアミノ酸置換が見出された。
  • FタンパクとGタンパクのアミノ酸置換により抗原性が変化したウイルスが再感染を引き起こした可能性がある。
  • Fタンパクのアミノ酸置換部位はRSウイルスのワクチン開発等で現在最も注目されている部位であり、抗ウイルス抗体製剤やワクチン等の抗ウイルス効果に影響を及ぼす可能性がある。
研究概要

東北大学医学系研究科微生物学分野の押谷 仁(おしたに ひとし)教授と岡本 道子(おかもと みちこ)助教らのグループは、急性呼吸器感染症の原因ウイルスであるRSウイルスの再感染に関与したウイルスの特徴的な変化を報告しました。本研究はウイルスのアミノ酸の置換がウイルスの抗原性に関与し、再感染が起こった可能性を初めて明らかにした重要な報告であり、未だ実用化されていないRSウイルスのワクチンの開発に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2018年5月2日The Journal of Infectious Diseases(電子版)に掲載されました。本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)感染症研究国際展開戦略プログラム(J-GRID)「フィリピン感染症研究拠点における国際共同研究の推進」および地球規模課題対応国際科学技術協力事業(SATREPS)「小児呼吸器感染症の病因解析・疫学に基づく予防・制御に関する研究」、国際協力機構(JICA)(SATREPS)、日本学術振興会科学研究費補助金(課題番号16H02642)の支援を受けて行われました。

研究内容

RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、小児における細気管支炎や肺炎などの急性下気道感染症の原因として最も重要なウイルスです。2歳までにほとんどの小児が感染しますが、特に6ヶ月未満の乳児や心肺に疾患がある小児、早産児が感染すると、症状が重篤となり入院治療が必要となる場合もあります。2015年のデータでは、世界各国において5歳未満の小児の3,300万人以上が罹患し、入院を要した320万の中で約6万人が死亡に至ったと推定されています。RSウイルスに対しては、一度の感染では免疫が十分に獲得できず再感染することが知られていますが、ワクチンはまだ実用化されていません。RSウイルスはサブグルーブAとBに分類され、ウイルスの抗原性に2つのタンパク質(FタンパクとGタンパク)が関与するとされていますが、ウイルスの抗原変異が再感染に関与しているかどうかは不明でした。

本研究では、フィリピンの5歳未満の約1,800名の小児の急性呼吸器感染症の追跡調査において、RSウイルスによる再感染の症例から検出されたウイルスの遺伝子配列を解析しました。再感染が認められた25名のうち4名が同じサブグルーブBに2回感染していたことから、それら4名から検出されたウイルスの遺伝子を解析した結果、最初の感染と2回目の感染で検出されたウイルスでは、FタンパクとGタンパクの特定の部位のアミノ酸が置換していることが明らかになりました。このアミノ酸の置換によってウイルスの抗原性が変化し、最初の感染による免疫が十分に機能しなかった可能性が再感染の原因のひとつとして考えられました(図1)。

本研究結果は、RSウイルスの再感染のメカニズムに対して新しい知見を与える重要な報告です。本研究で検出されたRSウイルスのFタンパクのアミノ酸置換部位は、ワクチンや抗ウイルス製剤の開発で現在最も注目されている部位であり、ウイルスの抗原性の変化はそれらの効果に影響を及ぼす可能性があります。

RSウイルスの再感染で抗原部位にアミノ酸置換を発見
図1.遺伝子の変異(アミノ酸置換)によるRSウイルスの再感染

論文題目
Title:
Molecular Characterization of Respiratory Syncytial Virus in Children with Repeated Infections with Subgroup B in the Philippines.
Authors:
Okamoto M, Dapat CP, Sandagon AMD, Batangan-Nacion LP, Lirio IC, Tamaki R, Saito M, Saito-Obata M, Lupisan SP, Oshitani H.
Journal:
Journal of Infectious Diseases.
日本語タイトル:
「小児のRSウイルス再感染におけるウイルスの分子生物学的特徴」
著者:
岡本道子、クライド、サンダゴン、バンタガン‐ナシオン、リリロ、玉記雷太、斉藤繭子、齊藤(小畑)麻理子、ルピサン、押谷仁
掲載雑誌名:
Journal of Infectious Diseases.
お問い合わせ先
研究に関すること

東北大学大学院医学系研究科微生物学分野
助教 岡本 道子(おかもと みちこ)

取材に関すること

東北大学大学院医学系研究科・医学部 広報室

AMED事業に関すること

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構
戦略推進部 感染症研究課(J-GRID担当)

国際事業部国際連携研究課(SATREPS担当)

医療・健康
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