2020-07-06 東京大学附属病院
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染が全世界的に拡大しており、その対策が急がれています。我が国は緊急事態宣言が本年5月25日に解除され、感染はいったん収束しつつありますが、今後の第二波、第三波の到来に備えて、COVID-19の治療薬の開発が喫緊の課題です。東京大学ではナファモスタットメシル酸塩がウイルスのヒトの細胞への侵入を抑制することで、COVID-19に対する有効性が期待できる治療薬として基礎的研究成果を発表してまいりました。今回、東京大学医学部附属病院ではナファモスタットメシル酸塩をCOVID-19に対する治療薬候補として選択し、ファビピラビルとの併用によって、肺炎を発症し集中治療室(ICU)での治療を必要とした重症のCOVID-19症例に対してコンパッショネート(人道的)使用による治療を行いました。
ナファモスタットメシル酸塩は抗凝固薬や膵炎治療薬として国内で使われてきた薬剤です。ファビピラビルはRNAポリメラーゼを抑制することでSARS-CoV-2のヒトの細胞内での増殖を抑制すると考えられています。ナファモスタットメシル酸塩とファビピラビルはウイルスの増殖過程における作用部位が異なることから、両者を併用することで相加的な効果が期待されます。また、COVID-19の一部の患者では、血管内での病的な血栓の形成が病気の悪化に関与していると考えられ、ナファモスタットメシル酸塩の抗凝固作用が有効であると期待されています。
本研究成果は、2020年7月3日に医学雑誌「Critical Care」のオンライン版にて発表されました。