細胞内物質を利用して”ひとりでに瞬く”蛍光色素~生きた細胞内の超解像イメージングに応用~

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2020-07-17 東京大学

東京大学薬学系研究科薬品代謝化学教室・医学系研究科生体情報学分野の両角明彦博士課程学生、神谷真子准教授、浦野泰照教授らが、生きた細胞内にあるグルタチオンという物質と可逆的に反応することで“自発的に明滅する”蛍光色素を開発し、生きた細胞の超解像イメージングに応用しました。本研究成果は2020年4月28日付けで、Journal of the American Chemical Society 誌に掲載されました。

超解像蛍光イメージング法は、光学顕微鏡の空間分解能の限界を超えた画期的なイメージング技法であり、その1つに、蛍光標識色素を1分子ずつ明滅させることで超解像画像を構築する手法(一分子局在化法)があります。しかしながら、一般的な色素を明滅させるには添加剤や強い光照射が必要であり、細胞への悪影響が課題でした。

本研究グループは今回、細胞内のグルタチオンという物質の作用を利用することで、生細胞内で自発的に光明滅を繰り返す2種の新規超解像イメージング用蛍光色素を開発し、添加剤や強い光照射を用いない穏和な条件の下で、生細胞内の微小管やミトコンドリアの超解像画像を取得することに成功しました。また、以前の研究で開発した色素と組み合わせて用いることで、“自発的に明滅する色素による、生細胞の2色超解像イメージング”を達成しました。

今回提案した新たな分子設計に基づき、新たな超解像イメージング用蛍光色素の開発がさらに加速することが期待できます。このような蛍光色素を活用した超解像イメージング法は、生きたままの細胞を詳細に観察する手段として、様々な生命現象の理解に役立てられていくことが期待されます。

「超解像蛍光イメージング法は、光の回折限界を超える画期的なイメージング技法で、これまで観測できなかった生命現象を捉える可能性があるとして期待されています。2014年のノーベル化学賞が、超解像蛍光イメージング法を開発した3名の先生に授与されたのはご存じの方も多いと思います。一般的な蛍光色素を明滅させる従来法では、細胞に悪影響を与えうる特殊な条件が必要でしたが、今回私達は、生きた細胞内にあるグルタチオンという物質の作用を利用することで 、“自発的に明滅する”蛍光色素を開発し、温和な条件下での超解像イメージングに成功しました」と神谷准教授は話します。

「特に、私達が開発した蛍光色素を用いて、生きた細胞内のミトコンドリアと微小管の位置関係が経時的に変化する様子を超解像イメージングで追跡できた際には、研究チーム全体で大変興奮しました。このように、生物学・医学研究に貢献し得るケミカルツールを自在に創出できるところに、有機化学と生物学の境界領域であるケミカルバイオロジー研究の面白さがあるのです」と浦野教授は話します。

自発的に明滅する蛍光色素の開発による超解像蛍光イメージング
a) 本研究で開発した超解像イメージング用蛍光色素(SiP650あるいはCP550)が自発的に明滅する仕組み。色素は、グルタチオン(GSH)と結合していない「蛍光性状態」(左)と、グルタチオンと結合した「無蛍光性状態」(右)との間を、自発的に行き来する。
b) 自発的に明滅する蛍光色素による、生細胞の2色超解像イメージングの例。生きた細胞のミトコンドリア(緑)をCP550で、微小管(赤)をHMSiRでそれぞれ染色し、2色の超解像画像を取得した。これを3分間隔で計3回実施することで、経時的観察を行った。その結果、例えば、点線枠内のミトコンドリアの構造や配置に関して、顕著な変化をとらえた。なお、各時刻での画像において、点線枠内の領域の拡大画像を右上隅に示している。また、全体画像におけるスケールバーは3マイクロメートル(1 マイクロメートルは、100万分の1 メートル)を示し、拡大画像におけるスケールバーは500ナノメートル(= 0.5マイクロメートル)を示す。
© 2020 両角明彦、神谷真子 浦野泰照

論文情報

Akihiko Morozumi, Mako Kamiya, Shin-nosuke Uno, Keitaro Umezawa, Ryosuke Kojima, Toshitada Yoshihara, Seiji Tobita, Yasuteru Urano, “Spontaneously blinking fluorophores based on nucleophilic addition/dissociation of intracellular glutathione for live-cell super-resolution imaging,” Journal of the American Chemical Society: 2020年4月28日, doi:10.1021/jacs.0c00451.
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