世界最大規模の家系付きコホートが全国の研究者へ利用可能に
2020-08-21 東北大学東北メディカル・メガバンク機構,日本医療研究開発機構
発表のポイント
- 世界最大の出生三世代コホート*1である三世代コホート調査の試料・情報分譲を開始します。世界的にも稀な調査デザインを持つ7万人規模の大規模なコホートが全国の研究者に利用可能になります。
- 分譲の対象となる情報は、ベースライン調査*2における、家系、調査票、検体(血液・尿)検査、産科カルテ転記情報です。家系情報は母子の2人から、8人以上で構成されるビッグファミリーまで含まれ、さまざまなバリエーションの解析が可能です。試料は、血清、血漿、単核球、不死化細胞、DNA、尿が主な対象です。
- 本分譲開始により約15万人の東北メディカル・メガバンク計画長期健康調査の全体が分譲対象となりました。
概要
東北メディカル・メガバンク計画において、三世代コホート調査のベースライン調査にご協力いただいた方々(総計67,450人)の試料(主に血清、血漿、単核球、不死化細胞、DNA、尿)と情報(家系、調査票、検体(血液・尿)検査、産科カルテに関する情報)について全国の研究者へ分譲を開始します。
今回、その全体の試料・情報が新たに分譲対象となる三世代コホートには、世界初の家系情報付き出生コホート調査という特徴があります。特に、出生コホートとして胎児の段階からの環境要因の把握が可能なだけではなく、家系情報があることにより、家族間での疾病や環境要因の共有の有無も考慮することができます。そのため、疾病と関連する要因との効率的な検討が可能となります。また三世代コホートには、1万組を超える父母児のトリオ、400組を超える8人以上の構成員からなるビッグファミリーが含まれており、同コホートはサンプルサイズの点からも多くの疾病の克服に役立つことが期待されます。
本分譲により、約15万人の東北メディカル・メガバンク計画の長期健康調査の全体が分譲対象となりました。分譲対象となる情報は、本計画が目指す次世代医療の実現に向けた個別化予防・医療に貢献しうるもので、世界の医学、医療の基盤となるものです。
図:東北メディカル・メガバンク計画のバイオバンク 試料・情報分譲のフロー
今回新たに分譲の対象になる試料・情報の詳細
- 試料
- 成人:血清、血漿、単核球、不死化細胞、DNA、尿、母乳(母のみ)
児:臍帯血、単核球 - 情報
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- 基本情報 性別、年齢、家系情報 母を中心にみた児・父母・同胞・祖父母・その他親戚の家系情報(トリオ約12,800組、ヘプタファミリー*3約170組、ビッグファミリー約400組)、67,450人)
- 調査票情報 母親(妊娠・出産に関すること):①環境、健康状態【調査登録時(主に妊娠初期)・妊娠中期・産後1か月時・産後6か月時・産後1年時・産後2年時】②生活習慣・食習慣【調査登録時(主に妊娠初期)・妊娠中期・産後1年時】
児:①環境、健康状態【生後1か月時・生後6か月時・生後1年時・生後2年時】 父親・同胞・祖父母・その他親戚:①環境、健康状態【調査登録時】②生活習慣・食習慣【調査登録時】 - 検体(血液・尿)検査情報 母親:調査登録時(主に妊娠初期)・妊娠中期・産後1か月時の情報 父親・祖父母:調査登録時の情報
- 産科カルテ転記情報 妊娠登録時、妊婦健診、分娩時、産後1か月健診、新生児、新生児生後1か月健診
今後の分譲
今回の三世代コホート調査の試料・情報の分譲開始により、本計画のコホート調査のベースライン調査の情報はほぼ全て分譲対象となりました。更に今後は、特に追跡調査によって得られている経時的な情報を分譲対象に加えていく予定です。また、別途進めている大規模なゲノム・オミックス解析情報を統合していきます。
今後も、長期健康調査を継続しデータの充実と共有を推し進め、日本の医療の基盤を担います。
参考
東北メディカル・メガバンク計画について
東北メディカル・メガバンク計画は、東日本大震災からの復興と、個別化予防・医療の実現を目指しています。東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)を実施機関として、東日本大震災被災地の医療の創造的復興及び被災者の健康増進に役立てるために、平成25年より合計15万人規模の地域住民コホート調査および三世代コホート調査等を実施して、試料・情報を収集したバイオバンク*4を整備しています。本計画については、平成27年度より、日本医療研究開発機構(AMED)が研究支援担当機関の役割を果たしています。
用語説明
- *1.三世代コホート調査
- ToMMoが2013年7月より開始した、妊婦さんと生まれたお子さんを中心にしたコホート調査。2017年3月までに7万人以上の参加者を得ている。世界的に見ても貴重な家系情報付きの大規模コホート調査である。なお、コホート調査とはある特定の人々の集団を一定期間にわたって追跡し、生活習慣などの遺伝要因・環境要因などと疾病発症の関係を解明するための調査のこと。
- *2.ベースライン調査
- 2013年から2017年にかけて実施したリクルート時の調査。
- *3.ヘプタファミリー
- 児を中心にみた父母・祖父母の7人により構成される家系。
- *4.バイオバンク
- 生体試料を収集・保管し、研究利用のために提供を行う。東北メディカル・メガバンク計画のバイオバンクは、コホート調査の参加者から血液・尿などの生体試料を集める。
実施機関・関係ウェブサイト
東北メディカル・メガバンク計画バイオバンク試料・情報分譲関連ウェブサイト
各変数の統計量は、統合データベースdbTMMカタログで閲覧いただけます。
東北メディカル・メガバンク 統合データベースdbTMMカタログ
お問い合わせ先
研究に関すること
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
三世代コホート室
室長 栗山進一(くりやましんいち)
分譲に関すること
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
試料・情報分譲室
室長 鈴木吉也(すずききちや)
報道に関すること
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
長神風二(ながみふうじ)
AMED事業に関すること
日本医療研究開発機構(AMED)
ゲノム・データ基盤事業部 ゲノム医療基盤研究開発課