ナイジェリアでポリオ発生ゼロを達成:ついにアフリカがポリオフリーに

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2020-08-26 JICA

2020年8月25日、アフリカからのポリオフリー(野生株ポリオの発生が無い状態)が宣言されました。アフリカ最後のポリオ常在国であったナイジェリアで直近3年間ポリオが発生していないことが認定されたためです。

経口ポリオワクチン(口から飲むタイプ)を子どもに接種する様子

JICAは、UNICEF(国連児童基金)やWHO(世界保健機関)などの国際機関や、ビル&メリンダ・ゲイツ財団(以下、ゲイツ財団)といったさまざまな援助機関と連携し、ナイジェリアのポリオフリーに向けた対策を、長年支えてきました。

ワクチンの調達から人材育成まで幅広い支援を続ける

ポリオは、ポリオウイルスにより手足の麻痺が起こる感染症で、深刻な後遺症が残る一方、ワクチンの接種により予防が可能で、アフリカ諸国でもポリオ対策が徹底されてきました。しかし、ナイジェリアでは貧困地域である北部を中心に継続してポリオ患者が発生していました。そのため、2012年にジョナサン大統領(当時)が「2015年までの感染遮断」を宣言。国家的な優先課題としてポリオの早期撲滅を掲げ、ワクチン接種などの対策強化を進めてきました。

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(左)ワクチンを接種した子どもを識別するために指に特殊なマーカーで印をつけます
(右)ワクチンの戸別訪問接種を終えた家にマーキングをするスタッフ

その結果、ナイジェリアでは2016年8月に確認された野生株ポリオの感染を最後に、ポリオの新規発生が抑えられています。この状況をふまえ、ナイジェリア政府はポリオ根絶認定地域委員会に対して根絶認定の手続きを申請して受理され、正式にポリオフリーが宣言されました。

JICAはナイジェリアのポリオ対策に向け、2000年代からUNICEFと連携して、ポリオワクチン調達や、ワクチンの輸送保管を行う保冷箱や冷蔵庫などのコールドチェーン整備に取り組んできました。また、ナイジェリア国内に2ヶ所ある国家ポリオ検査室での検査技術向上への協力やワクチンを安全に保管するための機材供与を実施。2014年からは、JICAの円借款で調達したワクチンを用いて、WHO、UNICEFをはじめ国際社会が連携して徹底した予防接種キャンペーンを展開しました。その結果、今回、ウイルス性感染症の域内での収束に至りました。このキャンペーンでは、一定の成果を達成後、ゲイツ財団がナイジェリア政府に代わり円借款資金を返済する新たな仕組みが導入されており、感染症対策のための官民連携としても革新的な事例です。

これまでのJICAの協力に対し、ポリオフリー宣言を機にナイジェリアのブハリ大統領から北岡JICA理事長に感謝状が届きました。ナイジェリアの感染症対策に長年携わってきた磯野光夫JICA国際協力専門員は、ポリオフリーの達成について、現地関係者らの粘り強い取り組みを称え、次のように振り返ります。

「ナイジェリアは国土が広く、アクセスが容易でない地域も多いうえに、治安も不安定な状況が続いていたなか、ポリオフリーを達成できたのは、政府のリーダーシップに加え最前線で困難なポリオ対策に従事してきた多くのスタッフの尽力によると思います。ナイジェリアのポリオフリーにより、世界中でポリオの常在国はアフガニスタン、パキスタンの2ヶ国になりました。両国ともナイジェリアとは程度の差はあるものの治安・貧困の問題など似たような社会状況を有しています。そのため、ナイジェリアのポリオ対策の経験は、両国に取っても多くの教訓を提示してくれるのみならず、両国のポリオ対策従事者の大きな励みにもなるものと思います」

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ナイジェリア農村部で実施された遊牧民へのワクチン接種

国内すべての子どもたちにワクチンを届ける

「ナイジェリアのポリオフリー達成は、20年以上にわたるポリオ根絶に向けた政府関係者をはじめとするすべて人々の努力と強い意志によるものです。これはJICAといった国際協力機関による技術面や資金面の協力があったからこそ成し遂げることができました」

国家プライマリヘルスケア開発庁のフェイザル・シュアイブ長官(右)
(写真提供/国家プライマリヘルスケア開発庁)

そう語るのは、ナイジェリア国内でポリオ対策活動を主導してきた国家プライマリヘルスケア開発庁のフェイザル・シュアイブ長官です。

ワクチンを国内すべての子どもに届けることができるよう、ワクチンを運ぶ車両の位置情報を、地理情報システムを活用してモニタリングするなど、革新的な方法も用いて国中でワクチンの接種を進めたと言います。

ナイジェリア政府のポリオ撲滅に向けた活動は、全世界でポリオを撲滅するために国際協力機関が取り組む「世界ポリオ撲滅イニシアティブ」の枠組みに沿って行われてきました。

ポリオワクチンを子どもたちに投与するWHOのナイジェリア担当フィオナ・ブラカ免疫チームリーダー(写真提供/WHOナイジェリア)

このイニシアティブの主要機関であるWHOのナイジェリア担当フィオナ・ブラカ免疫チームリーダーは、「ナイジェリアが大規模なポリオ撲滅活動を始めた1990年代後半、アフリカでは年間約7万5000人の子どもたちがポリオに感染し、そのほとんどがナイジェリアの事例でした」と振り返ります。

これまで、WHOは他の援助機関と連携してワクチン接種キャンペーンなどを実施し、特にワクチンを届けることが難しい紛争地域の子どもたちにもワクチンが行き渡るようサポートしてきました。今後は、「ポリオ封じ込めを継続させるため、ヒトからヒトへの感染発生時や環境中の発生時の早期検知などの点でナイジェリアを支援していきたい」とフィオナ・ブラカ免疫チームリーダーは述べます。

感染症対策への能力強化支援を新型コロナウイルス対策にも活用

ナイジェリアの首都アブジャにある国家標準検査室で、カウンターパートと倒立顕微鏡の動作確認を行う日本人専門家

アフリカでは、ポリオだけでなく、他の多くの感染症の脅威が存在し、引き続き対策を強化する必要があります。JICAはナイジェリアと周辺国における感染症の予防と拡大防止に向け、感染症対応力の強化、サーベイランス機能強化、研究能力の向上、検査室ネットワークの構築強化に向けた協力をこれからも続けていきます。

西アフリカ地域の感染症対策の拠点となっているナイジェリア疾病予防センター(NCDC)と連携し、バイオセーフティ・レベル(注)3の封じ込め検査施設建設や機材整備などを進め、国内における感染症アウトブレイクの早期検知及び拡大防止を目指しています。NCDCは今後、新型コロナウイルス対応に向けた西アフリカの拠点施設としても重要な役割を果たすことになります。

ナイジェリアをはじめアフリカでのポリオ撲滅や、感染症対応力強化に向けたJICAの取り組みが始まったのは、1990年代にさかのぼります。これまで多くの人材を育成し、技術協力や機材の供与なども行ってきました。この一連の取り組みは、ポリオだけに限らず、現在世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスといった感染症への対策にもつながると見込まれています。

(注)バイオセーフティ・レベル(Bio Safety Level:BSL):微生物・病原体等を取り扱う施設の格付け。1~4のレベルがあり、数字が大きいほど、感染を起こすと重篤な症状を示す病原体などを扱うことができる

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