2020-09-29 日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院,日本医療研究開発機構
このたび公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院(東京都府中市)の院長磯部光章が代表を務める研究グループ(以下、当研究グループ)は、入院した心不全患者全般、特にフレイルや心臓の収縮能が保たれた心不全患者においても多職種の心臓リハビリテーションが有効である可能性を示した、世界でも初めての多数例での研究成果をまとめました。また、このことが、『Circulation Heart Failure』誌に掲載されることになりました。
背景と目的
心不全は高齢化に伴い急増する症候群であり、本邦では毎年約1万人のペースで増加し2030年には約130万人が罹患すると推計されています。心不全は増悪に伴う再入院を繰り返し、そのたびに体力や心臓の機能が低下をし、最終的に死亡します。
心不全患者にはフレイル(生理的な予備力が低下し、ストレスに対して抵抗力が弱くなった状態)を合併する患者が多く、このような患者に対する有効な治療は確立していません。加えて、特に高齢の心不全患者では心臓の収縮機能が保たれている患者が半数以上を占めていますが、このような患者には有効性が証明された治療方法は薬物療法を含めて確立しておらず、全世界的に大きな課題となっています。
これらの課題に対して、当研究グループは、運動療法や生活指導、カウンセリングなどを多職種で包括的に行う心臓リハビリテーションが、病気の経過に関与するかを調査しました。
本研究成果の要点
本研究はAMED(日本医療研究開発機構)循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業(研究開発課題名:慢性心不全患者に対する多職種介入を伴う外来・在宅心臓リハビリテーションの臨床的効果と医療経済的効果を調べる研究)からの支援のもとで行われました。
国内15の多施設共同研究で、合計4339例の心不全による入院患者を対象として、後ろ向きに5年間追跡して得られたデータの解析をしました。
本研究で明らかになったことは主に以下の通りです。
- 心臓リハビリテーションを行った心不全患者では、統計的に様々な影響の要因を調整した上でも、退院後の死亡および再入院のリスクが23%低かった(図1)。
- フレイル心不全患者や心臓の収縮機能が保たれている患者においても、心臓リハビリテーションの実施は良好な予後と関連していることが明らかとなった(図2)。
論文発表
- 論文名
- Multidisciplinary Cardiac Rehabilitation and Long-Term Prognosis in Patients With Heart Failure.
- 多職種による心臓リハビリテーションが心不全患者の長期予後に及ぼす効果
- 執筆者
- 神谷健太郎(北里大学教授)、責任著者:磯部光章(榊原記念病院院長/東京医科歯科大学名誉教授)、他10名。
発表雑誌
Circulation Heart Failure、2020年9月29日(火)午前9時00分(日本時間)にonlineで公刊。
お問い合わせ先
本発表のお問い合わせ先
公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院
経営企画部 課長補佐 林裕幸
AMED事業のお問い合わせ先
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
疾患基礎研究事業部 疾患基礎研究課
循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業担当