生態ニッチモデリングによる生息可能領域の推定
2020-12-08 京都大学
チャン=ヴァン=ズン(Tran Van Dung)地球環境学舎修士課程学生、西川完途 地球環境学堂准教授の研究グループは、照井滋晴 NPO法人環境把握推進ネットワーク代表、野本和宏 釧路市立博物館学芸員と共同で、北海道に生息するキタサンショウウオ(Salamandrella keyserlingii)とエゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の2種の分布、生態ニッチ、生態的分化を明らかにしました。
本研究で扱った小型サンショウウオ類は、林床の落ち葉や倒木の下で暮らす隠棲的な動物であるため、非繁殖期以外には一般に発見が困難です。また生息地もパッチ状に分散していることも多いため、種の正確な分布範囲の特定が難しく、生態的特性の評価や保全地域の設定ができずに、基礎研究や保全研究において著しい障害となっていました。
このような状況を改善するため、本研究では生態的ニッチモデリングを用いることで、北海道に生息する2種のサンショウウオの生息範囲を推定することに成功しました。モデルによる解析の結果、キタサンショウウオの生息可能な地域は釧路湿原のごく限られた部分であったのに対し、エゾサンショウウオは北海道全域に及んでおり、現在の分布とよく適合していました。また、2種のサンショウウオの要求する環境的条件が大きく異なることも明らかになりました。さらに、それぞれの種の北海道内の分布が、いかにして現在の状態にいたったのか、その歴史的変遷も明らかにしました。これらの成果は、生息地管理や保護区設定といった絶滅危惧種キタサンショウウオの保護の一助となることが期待されます。
本研究結果は、2020年11月21日に、国際学術誌「Ecological Research」のオンライン版に掲載されました。
図:(左)キタサンショウウオ、(右)エゾサンショウウオ
研究者情報
研究者名:西川完途