COVID-19による嗅覚障害の病態解明や治療法開発の加速に期待
2021-02-02 東京大学医学部附属病院
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)によって引き起こされるCOVID-19の症状に嗅覚障害があります。SARS-CoV-2による嗅覚障害は初期症状の1つとして知られているだけでなく、発症後約2か月経過しPCRが陰性化した方の18~45%で何らかの嗅覚障害が残存していることも明らかになっています。一般的に傷害された嗅上皮(鼻の奥にある匂いを感知する部位)は一度脱落し菲薄しますが、再生して正常厚に戻ります。しかし傷害が重度の場合、嗅上皮は正常化しないことが知られています。SARS-CoV-2が嗅上皮に感染した場合、嗅上皮が脱落することがわかっていましたが上皮厚が正常化するかは不明でした。東京大学医学系研究科外科学専攻耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学、東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頚部外科の山岨達也教授らの研究グループは、テキサス大学医学部ガルベストン校の研究グループとの共同研究で、SARS-CoV-2ウイルス量に関わらず、感染が成立すると感染後数日で広範囲にわたって嗅上皮が脱落することを明らかにしました。また、大部分の嗅上皮は感染後21日で正常厚になることも見出しました。本研究の成果は、SARS-CoV-2感染による嗅覚障害の病態解明や治療シーズ開発を加速させると期待されます。
本研究成果は、2021年2月1日に「ACS Chemical Neuroscience」(オンライン版)にて発表されました。