2021-02-15 京都大学
中川一路 医学研究科教授らの研究グループは、人食いバクテリアとして知られるA群レンサ球菌が、宿主免疫応答を制御する新たなメカニズムを明らかにしました。
A群レンサ球菌は一般に咽頭炎などでよくみられる細菌ですが、一部の人では劇症化し、約30%の致死率を示します。近年世界的に流行しているA群レンサ球菌株の解析から、病原性に重要と思われる毒素(SLOとNga)は見つかっていましたが、どのようなメカニズムで感染に寄与するのかは不明でした。
今回の研究により、ヒトの細胞内に侵入したA群レンサ球菌は、SLOとNgaを分泌し、宿主の細胞内小器官であるゴルジ体を断片化させることで、免疫系の活性化に重要なケモカインの分泌を抑制したり、上皮バリアを弱体化させることで免疫を低下させるなどして、感染拡大につなげていることが明らかとなりました。この成果は、新たな細菌感染症治療法の開発ための重要な一歩と言えます。
本研究成果は、2021年2月9日に、国際学術誌「mBio」に掲載されました。
図:本研究の概要図
研究者情報
研究者名:中川一路