遺伝子が密に並んだゲノム上で転写を調節する仕組み

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2021-03-05 国立遺伝学研究所

Chromatin-based mechanisms to coordinate convergent overlapping transcription.

Soichi Inagaki, Mayumi Takahashi, Kazuya Takashima, Satoyo Oya, Tetsuji Kakutani.

Nature Plants 2021 March 1 DOI:10.1038/s41477-021-00868-3

タンパク質をコードする遺伝子のみならず、タンパク質をコードしない非コード領域も含め、予想より多くのゲノム領域で転写が起きていることが、さまざまな生物でわかってきましたが、ゲノム上で近接していたり、オーバーラップしていたりする転写を調節する仕組みは大部分が未解明でした。

本研究では、ゲノムがコンパクトで、遺伝子が密に並んでいるシロイヌナズナという植物を用いた解析により、数百もの遺伝子の内部において逆向きにオーバーラップする転写が起きていること、また、これがクロマチン修飾によって調整されていることを見出しました。両方向性の転写が起きている領域では、ヒストン修飾の一つ、ヒストンH3の4番目のリジンのモノメチル化(H3K4me1)が除去されることで、転写伸長の抑制が起きていました。またこの制御にはDNAのねじれを防ぐDNAトポイソメラーゼが関与していることもわかり、遺伝子が密に転写することで起きうるDNA のねじれを防ぐのに重要な役割を果たしていることが予想されます。面白いことに、この両方向性の転写を介した遺伝子制御は、植物が春に花を咲かせるのを可能にする、冬を経験したことの「エピジェネティックな記憶」にも関与していました。本研究の成果は、ゲノム上での近隣遺伝子との相互作用が遺伝子の制御に与える影響を示唆しており、今後、この未開拓な経路の分子機構や生物学的インパクトの理解につながることが期待されます。

Figure1

図:FLDによる制御モデル。
RNAポリメラーゼIIはDNA二本鎖をほどきながら遺伝子の転写を進める。トポイソメラーゼIは転写装置と協調して働き、DNAのねじれをほどき、転写の進行(転写伸長)を助ける。遺伝子の転写領域にはH3K4me1が局在しているが、両方向から転写するような遺伝子の場合、FLDがH3K4me1を除くことで転写の伸長を抑制し、両方向からの転写を円滑にしていると推察される。

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