ブドウ果実のDNA品種識別技術を確立~ シャインマスカットの育成者権侵害対応に利用可能~

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2021-03-08 農研機構

ポイント

農研機構は、シャインマスカットを含むブドウ24品種の果実を対象にしたDNA分析による品種識別技術を確立しました。また農研機構種苗管理センターは、この技術を用いて、これまで「葉」のみを対象としていた育成者権の侵害に対応するためのブドウ品種識別サービスに、「果実」を追加しました。ブドウ果実からのDNA品種識別が可能になったことで、育成者権侵害に対する抑止力としての効果が期待されます。

概要

農業・食品分野における知的財産の重要性が増す中、植物新品種は我が国農業の発展を支える重要な要素になっています。一方で、我が国で開発された優良品種の海外流出が相次いでいます。
そこで農研機構は、シャインマスカットを含む24品種(シャインマスカット、巨峰、デラウェア、ピオーネなど、国内生産量の90%以上を占める)のブドウ果実について、国内外での育成者権侵害への対応が可能な実用的なDNA品種識別技術を確立し、ホームページ(以下URL)で公開しました。
URL: http://www.naro.affrc.go.jp/collab/breed/hinshu_shikibetsu/index.html
農研機構種苗管理センターは、すでにブドウ24品種について、「葉」を対象にした品種類似性試験1)によるDNA品種識別サービス(税込34,980円)を行っています。今回、開発した技術を利用することで、品種識別サービスの対象に「果実」を追加しました。
開発したDNA分析による品種識別技術と、これを利用した品種識別サービスにより、国内及び海外からの侵害疑義果実の同定が可能となりました。育成者権侵害に対する抑止力としての効果が期待されます。

関連情報

予算:運営費交付金

問い合わせ先

技術開発責任者 :
農研機構本部 知的財産部 部長 山本 俊哉
同 果樹茶業研究部門 研究部門長 高梨 祐明
同 種苗管理センター 所長 寺田 博幹

担当者 :
同 本部知的財産部 課長 増元 洋美
同 果樹茶業研究部門品種育成研究領域 上級研究員 谷口 郁也
同 種苗管理センター 試験・検査部 課長 大崎 学

広報担当者 :農研機構本部広報部広報課 髙橋 咲子、栗山 朋子

詳細情報

開発の社会的背景と経緯

農業・食品分野における知的財産の重要性が増す中、植物新品種は我が国農業の発展を支える重要な要素になっています。一方で、我が国で開発された優良品種の海外流出が相次いでいます。そこで農研機構は、シャインマスカットを含むブドウの「果実」について、国内外での侵害対応が可能な実用的なDNA品種識別技術の確立を目指しました。
なお、ブドウの「葉」を対象にしたDNA品種識別技術は2018年にすでに確立しています。また農研機構種苗管理センターは、すでにブドウ24品種(表1)について、「葉」を対象にした品種類似性試験によるDNA品種識別サービス(税込34,980円)を行っています。

研究の内容・意義

1.シャインマスカットを含む24品種(表1)のブドウ果実について、国内外での育成者権侵害への対応が可能な実用的なDNA品種識別技術を確立しました。以下URLにて公開しています。
URL: http://www.naro.affrc.go.jp/collab/breed/hinshu_shikibetsu/index.html

2.本技術では、SSRマーカー2)分析により、品種識別を行います。2018年に確立した葉を対象としたDNA品種識別技術を基に、ブドウ果実からのDNA抽出方法を工夫することにより、果皮サンプルに適用可能な技術を開発しました。

3.本技術はISO 13495に基づく試験室内妥当性試験により、安定性、再現性等の妥当性を検証済みです。

4.開発した技術を利用することで、農研機構種苗管理センターにて行う、品種類似性試験によるブドウ24品種のDNA品種識別サービスが、「果実」からも分析が可能となりました。

関連情報:公開中のDNA鑑定技術

1.ブドウ24品種のDNA品種識別技術 – SSRマーカーによるブドウ24品種の果実のDNA品種識別技術 -(本技術)

2.ブドウ24品種のDNA品種識別技術 – SSRマーカーによるブドウ24品種のDNA品種識別技術 -(2018年12月 27日)

今後の予定・期待

今回、ブドウ果実からのDNA品種識別技術が確立し、また農研機構種苗管理センターにて行うDNA品種識別サービスの対象に果実が追加されたことで、国内及び海外からの侵害疑義果実の同定が可能となりました。本技術は、育成者権侵害への抑止力としての効果が期待されます。

用語の解説
1)品種類似性試験
農研機構種苗管理センターが育成者権者等の依頼により実施する、育成者権の侵害が疑われる品種と登録品種の比較試験。DNA分析は、イチゴ、カーネーション、カンキツ、ブドウ、リンゴなど11種類の植物について実施可能となっており、手数料は税込34,980円(10試料まで)となります。詳細については、
種苗管理センター:品種保護対策 | 農研機構
農研機構は食料・農業・農村に関する研究開発を行う機関です。
を確認ください。
2)SSRマーカー
生物のゲノム上に存在する数塩基単位の反復するDNA配列のことで、単純反復配列(simple sequence repeat)の略。マイクロサテライト(microsatellite)や縦列型反復配列(short tandem repeat; STR)と同義です。反復配列の繰り返し回数の違いによって個体を識別することが可能であり、DNA型鑑定、植物育種分野でDNAマーカーとして利用されます。
参考図

表1.果実で識別可能なブドウ24品種


1) 安芸クイーン(あきくいーん)、2) キャンベルアーリー、3) 巨峰(きょほう)、4) クイーンニーナ、5) グロースクローネ、6) 甲州(こうしゅう)、7) コンコード、8) サンヴェルデ、9) シャインマスカット、10) 翠峰(すいほう)、11) スチューベン、12) 赤嶺(せきれい)、13) 高尾(たかお)、14) デラウェア、15) ナイアガラ、16) ナガノパープル、17) ピオーネ、18) 藤稔(ふじみのり)、19) ブラックビート、20) ポートランド、21) マスカット・オブ・アレキサンドリア、22) マスカット・べーリーA、23) ルビーロマン、24) ロザリオビアンコ


 

細胞遺伝子工学
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