2021-03-29 京都大学
澤田直人 農学研究科修士課程学生、中野隆文 理学研究科准教授の研究グループは135年ぶりに、1886年の論文で使用されたイボカワニナの標本を検討し、現在イボカワニナと認識されている種が1886年に記載された「真の」イボカワニナとは異なる、学名がついていない種であることを解明し、新種サザナミカワニナとして記載しました。
琵琶湖で爆発的な種の多様化を遂げた淡水生巻貝のカワニナ属は、各種が多様な湖沼内環境に適応しています。1886年に琵琶湖から記載されたイボカワニナは、その生息環境に関して、記載論文と現在の認識に相違があるにもかかわらず、1886年の論文で使用された標本の所在が不明で、一度も検討されていませんでした。
サザナミカワニナは琵琶湖の深場に適応した種であると考えられ、殻表面に漣状の細かな縦方向や横方向の彫刻を持つことや、メスが胎児を非常に大きなサイズまで体内で育てるなど近縁種と顕著に異なる特徴を有します。本研究成果によりカワニナ属が一世紀を超えて抱えていた分類学的問題の一端が解決され、琵琶湖のカワニナ属の種多様性に関する知見が更新されました。
本研究成果は、2021年3月17日に、国際学術誌「Zoological Studies」のオンライン版に掲載されました。
図:サザナミカワニナの成貝殻(左)と生体(右)
研究者情報
研究者名:中野隆文