2021-04-16 京都大学
今井啓雄 霊長類研究所教授、糸井川壮大 同研究員、早川卓志 北海道大学助教らの研究グループは、マダガスカル島に生息する竹食性キツネザルの苦味受容体を解析した結果、これらのサルでは進化の過程で苦味感覚を減弱したことを発見しました。
苦いという感覚は、舌の上にある苦味受容体に苦味物質が結合したときに起こり、動物は本能的に苦いものを避けます。一方で、パンダのように他の動物が食べない苦い植物を主食とする動物も知られています。本研究グループは、サルの仲間のうち竹食に特化したグループに着目しました。
マダガスカル島のタケ類には、多くの哺乳類にとって有毒で苦味を呈する青酸化合物が大量に含まれます。しかし、この島には、こうしたタケを主食とするサルが複数種棲息しています。本研究では、これらのサルについて、TAS2R16と呼ばれる青酸化合物等を受容する苦味受容体の反応性を培養細胞系で解析した結果、それぞれの種で苦味感覚が減弱していることを発見しました。また、減弱の程度が種によって異なっていたため、その原因となるアミノ酸変異を探した結果、種ごとに異なる変異が苦味受容体の機能を減弱させていることがわかりました。つまり、彼らは平行進化によって竹の苦味を感じにくくなったと考えられます。
本研究成果は、2021年4月14日に、国際学術誌「Proceedings of the Royal Society B」のオンライン版に掲載されました。
図:(左)竹を食べるハイイロジェントルキツネザル(c)糸井川壮大、(右)本研究のまとめ
研究者情報
研究者名:今井啓雄
メディア掲載情報
日刊工業新聞(4月15日 23面)に掲載されました。