コレステロール代謝を制御するタンパク質:成熟型PCSK9は、 スタチン反応性低下症例の同定に有用であることを報告

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2021-05-17 国立循環器病研究センター

コレステロール代謝を制御するタンパク質:成熟型PCSK9濃度の測定は、コレステロール低下薬剤:スタチンへの反応性低下症例の同定に有用であることの報告を、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の心臓血管内科 九山 直人 研修生、心臓血管内科部 冠疾患科 片岡 有 医長、研究所 病態ゲノム医学部 堀 美香 客員研究員、分子病態部 斯波 真理子 非常勤研究員、野口 暉夫 副院長、辻田 賢一 教授 (熊本大学循環器内科)、安田 聡 教授 (東北大学循環器内科)らが行いました。

この研究結果は、英文機関誌「Journal of the American Heart Association」オンライン版に、令和3年5月15日に掲載されました。

背景

LDLコレステロールが高いと、心筋梗塞などの心臓病の原因となります。スタチンは、このLDLコレステロールを低下させる薬剤であり、冠動脈疾患患者さんにおいてその使用が日本循環器学会ならびに海外のガイドラインにより強く推奨されています。スタチン反応性低下症例は、心筋梗塞・心不全などの発症リスクが高いことが報告されていますが、このような患者さんをスタチン開始前に見つける方法は確立されていませんでした。

主に肝臓から産生されるタンパク質:成熟型PCSK9はコレステロール代謝を制御する作用を有しています。PCSK9は、成熟型として分泌され、LDL受容体と結合の後分解に導き、血中のLDLコレステロールを上昇させます(図1)。一方、細胞内の酵素furinで切断されると、LDL受容体を分解する作用を失います。当センター研究所の堀、斯波は、2015年に血液中の成熟型とfurin切断型PCSK9濃度を分けて測定する方法を世界で初めて開発しており(Hori, Harada-Shiba, et al. J Clin Endocrinol Metab 2015;100:E41-9)、本研究はスタチンの効果における成熟型PCSK9の関与を解明する研究を堀、斯波と共同で実施しました。

研究方法と成果

国立循環器病研究センターに入院しスタチン内服治療を受ける冠動脈疾患症例101例を対象に、血液中の成熟型PCSK9濃度を測定しました。スタチン投与開始後のLDLコレステロール値を基に、スタチン反応性低下症例との関係を検証しました。

スタチン投与にもかかわらず11例(11%)では、スタチンの効果が乏しくLDLコレステロールのコントロールは不良でした(図2)。このようなスタチン反応性低下症例は、血液中の成熟型PCSK9濃度が有意に高値でした(図2)。成熟型PCSK9濃度高値を示す症例は、スタチン反応性低下を示すリスクを12%高める有意な因子でした(オッズ比 1.12, 95%信頼区間 1.01-1.24, p値=0.03)。スタチン反応性低下症例を予測しうる血液中の成熟型PCSK9濃度のカットオフ値は228 ng/mlでした。

今後の展望と課題

今回の研究ではコレステロール代謝を制御するタンパク質成熟型PCSK9に注目しました。101例の冠動脈疾患症例の解析により、成熟型PCSK9濃度の上昇は、スタチンの効果減弱に関与することを明らかにしました。研究代表者の片岡は、LDLコレステロールのコントロールが不良な患者さんは、心筋梗塞や心不全などの発症・再発リスクが高いことを既に報告してきました(Kataoka, et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol 2015;35:990-5, Tsuda, Kataoka, et al. Cardiovasc Diagn Ther 2020;10:705-16)。

本研究結果から、成熟型PCSK9濃度測定は、薬剤治療開始前にスタチン効果の予測において有用である可能性が示唆されました。成熟型PCSK9濃度測定を行うことにより、心臓病発症予防・再発を目指した個別化医療の実現にもつながるものと期待されます。

発表論文情報

著者:Naoto Kuyama, Yu Kataoka, Takegami M, Nishimura K, Harada-Shiba M, Hori M, Ogura M, Otsuka F, Asaumi Y, Noguchi T, Tsujita K, Yasuda S
題名:Circulating mature proproteinconvertase subtilisin/kexin type 9 level predicts diminished response to statin therapy.
掲載誌:Journal of the American Heart Association

謝辞

本研究は、下記機関より資金的支援を受け実施されました。
公益財団法人 臨床薬理研究振興財団 平成29年度(第42回)研究奨励金並びに特別奨励金

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