世界初・日本発:超音波検査による乳がん検診のランダム化比較試験(J-START)

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若い女性への乳がん検診の標準化と普及へ向けて 第2報

2021-08-19 東北大学大学院医学系研究科,日本医療研究開発機構

研究のポイント
  • 若年女性に対する乳がん検診での乳房超音波検査の有効性を検証する目的で「ランダム化比較試験注1(RCT)」を用い76,196人の協力を得て実施しました。第1報の「プライマリエンドポイント:初回検診における感度、特異度、がん発見率」は2016年1月にLancetに掲載されました。
  • 今回の第2報では、乳房超音波検査がマンモグラフィの偽陰性問題(検診でがんを検出できないこと)を補う有力な検査法であることが示されました。
  • 超音波検査を用いた乳がん検診に関する大規模RCTは世界初であり、この成果は日本および世界で増え続ける乳がん対策の重要な礎となることが期待されます。
研究概要

乳がんの検診法として、乳房超音波検査の導入が期待されていますが、その有効性評価に関する研究は報告されていませんでした。東北大学大学院医学系研究科の大内 憲明(おおうち のりあき)客員教授らの研究グループは、40歳代女性を対象に乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験を実施し、今回、第2報を公表します。

本研究は、科学的に最も質の高い研究デザインである「ランダム化比較試験注1(RCT)」を用い、日本全国から76,196人の女性たちの協力を得て行われました。大規模な超音波検査を用いた乳がん検診に関するRCTは世界で初めてであり、この成果は日本および世界で増え続ける乳がん対策の重要な礎となることが期待されます。

今回の報告は、介入群と対照群における「乳房濃度別の感度、特異度解析による超音波検査の評価」となります。研究の結果、乳房超音波検査がマンモグラフィの偽陰性問題(検診でがんを検出できないこと)を補う有力な検査法であることが示されました。

本研究の結果は、2021年8月18日のJAMA Network Open(電子版)に掲載されました。本研究は、厚生労働科学研究費補助金および日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業の支援を受けて行われました。

研究内容

乳がんは女性がんで最も多く、壮年層での死亡率第一位を占めていることから、早期発見による対策が求められています。死亡率減少効果が臨床試験で証明され国際的に普及しているのがマンモグラフィによる検診です。しかし、マンモグラフィ検診は特に乳房濃度注2の高い(高濃度乳房の)若い女性で精度が低下することが国際的な問題となっています。一方、超音波検査は乳房濃度に依存せず安価であり、乳がん検診への導入が期待されていますが、有効性評価に関する研究は報告されていません。私たちは平成18年度に「がん対策のための戦略研究:超音波検査による乳がん検診の有効性を検証する比較試験(J-START)」を提案し採択されました。最大の特徴は日本で経験のなかったランダム化比較試験(RCT)を76,196人の40歳代健常女性のご協力を得て実施したことです。マンモグラフィ受診群を対照とし、マンモグラフィ検診に超音波検査を加えた群を介入群として、無作為に割り振られた方法で初回とその2年後に同じ検診を受診いただくランダム化比較試験と呼ばれる研究デザインで平成19年度から登録を開始しました。

研究成果の第1報(プライマリエンドポイント:感度、特異度、がん発見率)はLancetに掲載されました(2016年1月)。今回の第2報は、介入群と対照群における「乳房濃度別の感度、特異度解析による超音波検査の評価」についての報告です。


図1 J-STARTの概要

研究の結果、高濃度乳房のみならず非高濃度乳房においても、介入群での感度が有意に高く、超音波検査の上乗せ効果が確認されました。このことは、従来から指摘されてきた高濃度乳房問題は、「高濃度」対「非高濃度」ではなく、マンモグラフィ検診における偽陰性問題(検診でがんを検出できないこと)であることを解明したことになります。すなわち、乳房超音波がマンモグラフィの弱点(エックス線検査に伴う偽陰性)を補う有力な検査法であることが示されました。


図2 発見がん数と乳腺濃度別モダリティの感度

結論
今回の成果は、従来から指摘されてきたマンモグラフィ高濃度乳房問題における解決策の一つであり、我が国のみならず国際社会へ大きなインパクトを与えうるものです。すでに、臨床医が標準的な治療を知る上で重要な情報源の検証作業を担う国際的機関Cochrane Review注3と、高濃度乳房啓発を担う米国非営利団体DenseBreastInf.orgからも問合せが届いています。40歳代罹患率の高い日本を含むアジア地域では特に重要な成果といえます。
支援
本研究は、厚生労働省科学研究費補助金および日本医療研究開発機構革新的がん医療実用化研究事業(平成26年度~28年度、平成29年度~令和元年度、令和2年度~)の支援により行われました。
用語説明
注1.ランダム化比較試験
最も質の高い科学的証拠が期待できる研究試験のデザインの一つ。既知の試験参加者の属性や影響を及ぼし得る未知の因子による偏りを2群間で少なくするために、手順書(プロトコール)に従い介入群と非介入群を無作為に割り付ける。新しい治療方法や予防を含めた医療の臨床試験で、科学的な証拠を検証するために用いられることが推奨されている。
注2.乳房濃度
乳房は乳腺組織、脂肪組織、皮膚、乳頭・乳輪、血管などにより構成され、マンモグラフィではX線が通過しにくい乳腺組織は白く、通過しやすい脂肪組織は黒く写る。乳房に占める乳腺組織の割合のことをマンモグラフィでは「乳腺濃度」と言う。
注3.Cochrane Review
ランダム化比較試験(RCT)を中心に臨床試験をくまなく収集し、評価、分析した統計的レビュー。抄録や一般語訳(医学の専門用語を避けて書かれた平易な要約)が付けられ、医療関係者や医療政策決定者、さらには一般市民がエビデンス(科学的根拠)の内容を理解するのを支援する。
参考資料

J-START-若い女性への乳がん検診の標準化と普及へ向けて-第2報 PDF

論文情報
論文題目
Evaluation of adjunctive ultrasonography for breast cancer detection among women aged 40-49 years with varying breast density undergoing screening mammography: A secondary analysis of a randomized clinical trial
著者
Narumi Harada-Shoji, MD, PhD; Akihiko Suzuki, MD, PhD; Takanori Ishida, MD, PhD; Ying-Fang Zheng, MD, PhD; Yoko Narikawa-Shiono, PhD; Akiko Sato-Tadano, MD, PhD;
Rie Ohta; Noriaki Ohuchi, MD, PhD
掲載誌名
JAMA Network Open.2021;4(8):e2121505.
DOI
10.1001/jamanetworkopen.2021.21505
お問い合わせ先

研究に関すること
東北大学大学院医学系研究科 乳腺内分泌外科学分野
教授 石田孝宣
客員教授/名誉教授 大内憲明

報道に関すること
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室

AMED事業に関すること
日本医療研究開発機構(AMED)
ゲノム・データ基盤事業部 医療技術研究開発課
革新的がん医療実用化研究事業

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