2021-08-26 東京大学総合文化研究科・教養学部
生命システムの短時間でのダイナックな変動と何世代にもわたる進化による変化との関係は、生命科学の中心的なテーマとして長らく議論されています。しかし、定量的検証は容易ではなく、またその関係の理論的な起源も明らかにされていません。
東京大学大学院総合文化研究科の唐乾元(Qian-Yuan Tang)特任研究員(研究当時/現・理化学研究所)と金子邦彦教授は、タンパク質を対象にして、この問題に挑みました。タンパク質は触媒活性など様々な生体機能の基盤をなします。機能をもつタンパク質はある安定した構造をもちますが、そのまわりで熱によって揺らぎ、その変動が機能の引き金ともなります。一方、進化により、そのアミノ酸配列に変異が生じ構造が変形します。
本研究では、数百のタンパク質ファミリーからなる数十万個のタンパク質のデータベースを用いて、この両者、つまり熱雑音によるタンパク質のダイナミクス(熱揺らぎ)と、突然変異によるタンパク質の構造変化との間に強い相関関係を見いだしました。さらに、タンパク質の理論モデルを用いて、このダイナミクス―進化の対応関係が、熱揺らぎと突然変異による変化が共通の少数次元の空間に拘束されていることに起因していることを示しました。これらの結果は、機能的生命システムや人工知能システムの設計へも新たな視点を与えます。
論文情報
Qian-Yuan Tang* and Kunihiko Kaneko*, “Dynamics-evolution correspondence in protein structures,” Physical Review Letters: 2021年8月26日, doi:10.1103/PhysRevLett.127.098103.
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