2022-01-18 京都大学
ワラビーは、小型のカンガルーです。近年、国内外の動物園で、通常の体色(褐色や灰色)の母親から白いワラビーが生まれたというニュースが続いています。様々な場所で生まれるのには何か共通の原因があるものと推察されます。しかし原因は究明されていません。日本でも、高知県立のいち動物公園で 2015 年に白いワラビーのリリーが生まれました。
古賀章彦 霊長類研究所教授、林咲良 同修士課程学生、桂有加子 同助教、本田祐介 高知県立のいち動物公園飼育課長、清水小波 同飼育課員らの研究グループは、なぜ白い体色のワラビーが生まれるのかを追求し、リリーで初めて原因の解明に至りました。メラニン色素の合成には、チロシナーゼという酵素が大きく関与します。その酵素を作るための遺伝子に、リリーでは余分なDNAが入り込み、遺伝子の機能に影響していました。各地の動物園で飼育されている動物は、世代を遡れば同じ祖先に行き着くことがあります。祖先の中に、この変異型遺伝子をもつ個体もいて、子孫を通じて変異型遺伝子が各地に広まったとの推測が成り立ちます。なお、入り込んでいる余分なDNAは、転移因子(ウイルスと同様の仕組みで移動するDNA)でした。この結果は転移の仕組みの解明にも役立ちます。
本研究成果は、2022年1月14日に、国際学術誌「Genome」にオンライン掲載されました。
図:通常の体色のアオ(左)と白いワラビーのリリー(右)(撮影:清水小波)
研究者情報
研究者名:古賀章彦
研究者名:桂有加子