巧みな生存戦略を持つ寄生蜂の全ゲノム配列解読に成功

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2022-06-14 筑波大学,科学技術振興機構

寄生蜂とは、宿主(主に他種昆虫)の栄養やエネルギーを利用して生活するハチ目昆虫の総称です。その種数は、昆虫類約100万種の中の約20パーセントをも占めると推定されており、地球上で最も成功した戦略を持つ動物群の1つといっても過言ではありません。寄生蜂の巧みな生存戦略を解明することは、生物の進化を理解する上でも重要です。

本研究グループは、キイロショウジョウバエ Drosophila melanogasterを宿主とする寄生蜂ニホンアソバラコマユバチ Asobara japonicaを用いて、寄生蜂の生存戦略を支えている分子生物学的基盤を明らかにすることを目指しており、今回、その全ゲノム配列の決定と全遺伝子予測、さらに、遺伝子ノックダウン法の開発に成功しました。

ニホンアソバラコマユバチは、キイロショウジョウバエのみならず、多くのショウジョウバエ属昆虫を宿主とすることが知られています。その中には、現在ヨーロッパを中心に果物の害虫として深刻な問題となっているオウトウショウジョウバエ Drosophila suzukiiも含まれます。本研究成果は、ショウジョウバエの害虫種に対する農薬の開発シーズの創出にもつながると考えられます。

本研究成果は、2022年6月10日(現地時間)に「DNA Research」に掲載されました。

本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)「内部寄生蜂が宿主ショウジョウバエ幼虫に誘導する組織特異的細胞死シグナル経路の解析」(研究費番号18K05670、研究期間:2018〜2020年度)、特別研究員奨励費「寄生蜂の飼い殺し型寄生を司る組織選択的アポトーシス誘導因子の同定と作用機序の解明」(研究費番号21J10894、研究期間:2021〜2022年度)、JST さきがけ「生体における微粒子の機能と制御(微粒子)」領域(グラント番号JPMJPR19H6、研究期間:2019~2022年度)、文部科学省 科学研究費 助成事業学術変革領域研究「学術研究支援基盤形成」先進ゲノム解析研究推進プラットフォームの支援により実施されました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Whole-genome sequencing analysis and protocol for RNA interference of the endoparasitoid wasp Asobara japonica”
DOI:10.1093/dnares/dsac019
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
島田 裕子(シマダ ユウコ)
筑波大学 生存ダイナミクス研究センター 助教

<JST事業に関すること>
保田 睦子(ヤスダ ムツコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ライフイノベーショングループ

<報道担当>
筑波大学 広報局
科学技術振興機構 広報課

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