123Ⅰ-メタヨードベンジルグアニジン(MIBG)心筋シンチグラフィは パーキンソン病・レビー小体型認知症の診断に特異的な検査であることを証明

ad

2022-04-19 東京都健康長寿医療センター,日本医療研究開発機構

発表内容の概要

東京都健康長寿医療センターは、123I-メタヨードベンジルグアニジン(MIBG)心筋シンチグラフィの取り込み低下がパーキンソン病、レビー小体型認知症の診断に特異的な検査であることを、ブレインバンク登録例を用いた実証研究により明らかにしました。本研究は、米国神経学会雑誌「Neurology」に2022年4月19日(日本時間)オンラインにて発表されました。

123I-メタヨードベンジルグアニジン(MIBG)心筋シンチグラフィは パーキンソン病・レ小体型認知症の診断に 特異的な検査であることを証明の概要図

研究の背景

パーキンソン病、レビー小体型認知症は、神経伝達に関与するαシヌクレイン蛋白質が、異常な代謝を受け蓄積した、レビー小体の出現が特徴です。レビー小体は高齢者の約1/3に出現することが我々の研究(注1)で明らかになっており、パーキンソン病は65歳以上の50人に一人程度にみられます。またレビー小体型認知症は認知症の中でアルツハイマー病につぐ頻度であるものの、臨床症状から他疾患との鑑別は困難で、確定診断は死後の剖検に頼らざるを得ず、糖尿病における血糖値のような診断指標の確立が緊急の課題となっていました。

パーキンソン病、レビー小体型認知症は、レビー小体が脳だけでなく、心臓を含む全身に出現することが知られており、心臓交感神経の脱落を伴います。123I-MIBG心筋シンチグラフィは、心臓の交感神経に取り込まれ、交感神経機能を可視化するもので、上記二疾患では心臓交感神経の脱落を反映し、123I-MIBG心筋シンチグラフィの心臓での取り込みが低下します。これまで本邦で診断に汎用されてきましたが、診断された方の、最終確定診断すなわち剖検による確認は行われていません。欧米では有用性の承認はされても、実際にはほとんど使用されていません。

東京都健康長寿医療センターは、在宅支援総合救急病院として、疾患の最初から最後まで患者に寄り添い、生活の質を高める努力をしてきました。高齢者ブレインバンクは、亡くなられた際に剖検による確定診断を行うことで最後の貢献をし、得られた組織リソースによる、早期診断・根治療法開発をめざしています。本研究では、ヒト死後脳リソース(高齢者ブレインバンク)登録例の、脳・脊髄を含む全身の検索により、生前に123I-MIBG心筋シンチグラフィを撮像されていた方の、最終所見との対比を行いました。

(注1)Tanei ZI. et al. Lewy pathology of the esophagus correlates with the progression of Lewy body disease: a Japanese cohort study of autopsy cases. Acta Neuropathol. 2021:141(1):25-37.

研究成果の概要

本研究は、2006年から2021年までの16年間の、東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク登録連続開頭剖検例のうち、生前に123I-MIBG心筋シンチグラフィを撮像していた56名を対象にしました。123I-MIBG心筋シンチグラフィの結果と病理学的検索結果との対比を行い、123I-MIBG心筋シンチグラフィでの心縦隔比の値は心臓における残存交感神経面積/神経束面積と強い相関 [相関係数:早期相0.75, 後期相0.81] を示し(図1)、現在広く用いられている標準的なカットオフ値(注2)での心縦隔比の値は、高い特異度を示しました[早期相:感度70.0%, 特異度96.2%; 後期相: 感度80.0%, 特異度92.3%]。心縦隔比後期相はカットオフ値を標準値より下げることで、感度を保ちながら特異度を100%に高めうることが示唆されました(図2)。 その結果として、① 123I-MIBG心筋シンチグラフィの検査結果は心臓の交感神経の残存量をよく反映すること、② 心臓での取り込み低下があればレビー小体病の存在が強く疑われることを明らかにしました。すなわち、カットオフを的確に設定することで、心臓での取り込み低下は、パーキンソン病・レビー小体型認知症の確定診断指標となり得ることを証明しました。


図1


図2

(注2) Nakajima K. et al. Normal values and standardization of parameters in nuclear cardiology: Japanese Society of Nuclear Medicine working group database. Ann Nucl Med 2016;30(3):188-199.

研究の意義

123I-MIBG心筋シンチグラフィは、パーキンソン病・レビー小体型認知症の医学的な指標となりうることが実証されました。現在健康長寿医療センターでは認知症未来プロジェクトが進行中であり、臨床・病理画像のAI診断法の確立とあわせて、今後大きな社会貢献が期待できる成果です。

助成金などの必要情報

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED) 脳科学研究戦略推進プログラム 「臨床と基礎研究の連携強化による精神・神経疾患の克服(融合脳)」 脳とこころの研究推進プログラム「精神・神経疾患メカニズム解明プロジェクト」、および JSPS科研費新学術「コホート・生体リソース支援プラットフォーム」の助成を受けて行われました。

掲載誌

https://n.neurology.org/content/98/16/e1648.long
Matsubara T, Kameyama M, Tanaka N, et al.
Autopsy validation of the diagnostic accuracy of 123I-meta-iodobenzyl-guanidine myocardial scintigraphy for Lewy body disease. Neurology, 2022, in press
DOI: 10.1212/WNL.0000000000200110

お問い合わせ先

研究に関する問い合わせ先
東京都健康長寿医療センター
神経病理学研究(高齢者ブレインバンク)
部長 齊藤 祐子

AMED事業に関する問い合わせ先
日本医療研究開発機構(AMED)
疾患基礎研究事業部 疾患基礎研究課
脳科学研究戦略推進プログラム

ad

医療・健康
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました