2022-07-21 京都大学
齊藤智 教育学研究科教授、柳岡開地 東京大学日本学術振興会特別研究員PD(現:大阪教育大学特任講師)、Yuko Munakata カリフォルニア大学教授らの研究グループは、幼児期の「満足遅延」(すぐに得られる小さな報酬を我慢し、将来得られる大きな報酬を優先すること)が文化に特有の「待つ」習慣により支えられることを明らかにしました。
日本の幼稚園や保育所、小学校、家庭では、皆が揃ってから「いただきます」と唱え、食べ物を口にする習慣があります。研究グループは、こうした食卓文化の中で育った日本の子どもは、食べ物を報酬とした満足遅延課題の待ち時間が長いと仮定しました。検証のために、日本と米国の子どもを対象として、包装されたプレゼントを報酬としたギフト条件(日本の子どもには「待つ」習慣が形成されていないと予想)とマシュマロを報酬とした食べ物条件を比較しました。その結果、予想通り、日本の子どもたちは、ギフト条件よりも食べ物条件において、目の前の報酬を我慢する割合が高いことが示されました。一方、米国の子どもたちは、食べ物条件よりもギフト条件において、報酬を我慢する割合が高いことが示されました。
本研究成果は、2022年6月24日に、国際学術誌「Psychological Science」にオンライン掲載されました。
図:異なる報酬を用いた満足遅延課題の日米比較
○は食べ物条件における待ち時間の中央値、□はギフト条件における待ち時間の中央値を示している。
研究者のコメント
「書籍やメディアなどでも取り上げられる機会のあるマシュマロテストですが、日本における実証研究は少なく、私たちはまず、日本で予備実験を行いました。そこで、多くの日本の子どもがマシュマロを含む好みのお菓子を食べないで待っていることを発見し、大いに驚きました。日本学術振興会の外国人招へい研究者として京都大学に約半年滞在していた米国の共同研究者と議論するなかで、日米における食卓習慣の違いに着目し、その影響を実証するに至りました。このような満足遅延の発達研究によって、教育・保育・福祉に資する知見を着実に積み重ねていきたいと考えています。最後になりましたが、本研究にご協力くださった子どもさんや保護者の方々にあらためて感謝申し上げます。」(柳岡開地・齊藤智)
研究者情報
研究者名:齊藤 智