2023-09-01 国立成育医療研究センター
国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)研究所社会医学研究部の帯包エリカ研究員、
大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部田淵貴大部長補佐らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下における父親の産前・産後期うつ病のリスク要因に関する研究結果を発表しました。
本研究は、2021年8月に行われた「コロナ禍の社会・健康関連の要因への影響を明らかにするためのインターネットコホート調査(JACSIS調査)」の中で、パートナーの妊娠・出産を経験した産前473名と産後1,246名の父親を対象に行われました。
その結果、産前・産後共に「コロナへの強い不安」(約2.1倍)や、困った時に家族が助けになってくれるかなどの「家族機能の低さ」(約1.9倍)に対するリスクが高いことが明らかになりました。これらの要因は、過去の研究で示された母親のうつ病のリスク要因とも共通しています。本研究により、産前・産後期のメンタルヘルスの問題は、母親だけでなく父親にとっても重要な課題であることが示されました。
本研究結果は、国際的な学術誌「Journal of Psychosomatic Obstetrics & GynecologyIPOB」に掲載されました。
プレスリリースのポイント
- 産前・産後の父親のうつ病のリスク要因は、コロナへの強い不安、こども時代の困難な体験、パートナー妊娠前のうつ病既往、家族関係の問題などがあります。これらは母親の産前・産後うつ病の一般的なリスク要因と共通しています。
- 父親の産前・産後期のメンタルヘルスケアが重要であり、母親に対する支援と同様に、保健・医療従事者による父親やその家族への適切な支援が求められます。今後の研究で早期発見や予防への取り組みが期待されます。
背景
父親の産前・産後のうつ病発症率は約10%前後といわれ、母親と同様な頻度で起こり、自身やこどもの健康に影響を与える重要な問題です。しかし、父親に関する要因については明確になっていないことが多くあります。本研究は、父親の心理・社会的な要因を中心に研究を行い、父親がどのような属性や要因によってメンタルヘルスケアを必要とし、どのような介入を実施すべきかを理解するため実施しました。
発表論文情報
論文タイトル:Risk factors of paternal perinatal depression during the COVID-19
pandemic in Japan
雑誌名:Journal of Psychosomatic Obstetrics & Gynecology IPOB
著者:Erika Obikane1), Daisuke Nishi3), Naho Morisaki1) and Takahiro Tabuchi2)
1)国立成育医療研究センター 社会医学研究部
2)大阪国際がんセンター がん対策センター疫学統計部
3)東京大学医学系研究科 精神保健学分野
DOI:10.1080/0167482X.2023.2245556.
- 本件に関する取材連絡先
国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室