日本初、家系情報付き大規模コホート調査結果を分譲開始~三世代7人家族158組の情報の分譲~

ad

2020-01-10   東北大学東北メディカル・メガバンク機構,日本医療研究開発機構

発表のポイント
  • 東北メディカル・メガバンク計画においては、コホート調査*1で得られた家系等を含む情報について、日本で初めて分譲を開始します。
  • 分譲の対象は、三世代コホート調査*2によって得られたもので、7人家族を形成する三世代(児を中心にみた父母・祖父母の7人により構成される家系)、158組家系(1,107人)になり、家系、調査票(生活)、検体(血液・尿)検査、全ゲノム解析に関する情報です。
  • 世界でも稀な家系情報付きの大規模コホート情報を、全国の研究者が利用可能にとなります。遺伝要因・環境要因の家族内での類似性もしくは異質性を三世代にわたって比較することで、効率的な疾病の原因解明につながり、次世代医療の実現に向けた個別化予防・医療の加速が期待されます。
概要

東北メディカル・メガバンク計画において、三世代コホート調査のベースライン調査*3(2013年から2017年まで実施)にご協力いただいた方々のうち、7人家族を形成する三世代(児を中心にみた父母・祖父母の7人により構成される家系)158組の家系、調査票(生活)、検体(血液・尿)検査、全ゲノム解析に関する情報について、分譲を開始します(表参照)。

今回の分譲では初めて家系情報が含まれます。祖父母・父母・児の三世代を通して、健康調査情報、遺伝情報を組み合わせることにより、これまで難しかった遺伝要因及び環境要因が複雑に絡み合って起こる疾病の原因を効率的に探索することが可能になります。三世代の家系情報の分譲は国内初であり、当計画が目指す次世代医療の実現に向けた個別化予防・医療に貢献すると考えています。

今回分譲するデータは所定の手続きの後(図参照)、統合データベースdbTMM*4を通してさまざまな条件で検索して閲覧することができます。また、申請・承認を経たうえで、分譲された情報を用いて申請者の自由な発想に基づいた解析研究を行うことができます。なお、三世代以上の家系付のコホート調査は海外を含めても珍しく、オランダで約16万人の参加者を得ているLifelinesや、約4万人の参加者を得ている英国のALSPAC研究などが知られていますが、出生からの三世代以上のコホートとしては、当計画による20,000家系以上の取組が世界最大です。

日本初、家系情報付き大規模コホート調査結果を分譲開始~三世代7人家族158組の情報の分譲~
図:東北メディカル・メガバンク計画のバイオバンク 試料・情報分譲のフロー

分譲する情報は個人が特定できないよう匿名化したうえで他の研究機関に分譲が可能になるよう、インフォームド・コンセントを取得しております。

本事業は、日本医療研究開発機構(AMED)による東北メディカル・メガバンク計画のもと、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)および岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)によって行われています。

今回新たに分譲の対象になる情報の詳細
  1. 家系情報
    児を中心にみた父母・祖父母の7人により構成される家系の情報
    (158組、1,107人(含双子1組))
  2. 調査票(生活)情報
    母親:妊娠・出産に関すること
    調査登録時(主に妊娠初期)・妊娠中期の環境、健康状態、生活習慣
    産後1か月時の環境、健康状態
    児:生後1か月時の環境、健康状態
    父親・祖父母:調査登録時の環境、健康状態
  3. 検体(血液・尿)検査情報
    母親:調査登録時(主に妊娠初期)・妊娠中期・産後1か月時の情報
    父親・祖父母:調査登録時の情報
  4. 全ゲノム解析情報
今回の分譲により期待される展開

疾病は遺伝要因と環境要因、並びにその相互作用により発症します。遺伝要因・環境要因の家族内での類似性もしくは異質性を三世代にわたって比較することで、表現型(個体に現れた性質)の有無や程度に寄与している因子を効率的に明らかにすることができます。そのため効率的な疾病の原因解明につながり、次世代医療の実現に向けた個別化予防・医療の加速が期待されます。

更には、例えば以下のような利用法が想定されます

  1. 調査票(生活)情報、検体(血液・尿)検査情報を主に活用する研究者
    • 祖父母の健康状態が母の妊娠中の健康状態や児(孫)の健康状態に与える影響を検証
    • 祖父母が父母を出産した年齢と児(孫)の健康状態との関連を検証
    • 祖父母及び父母の生活習慣と児(孫)の性別との関連を検証
  2. 全ゲノム解析情報を主に活用する研究者
    • 日本人での新生突然変異*5率の正確な推定
    • 新生突然変異の父系年齢効果の検証
    • 世代間継承のパターンによるゲノムバリエーション*6の高精度化
    • 遺伝地図や連鎖不平衡*7地図の作成
今後の分譲

三世代コホート調査に参加いただいている総計約7万人の家系・調査票(生活・食)・検体(血液・尿)検査に関する情報について、近々分譲できるよう準備を進めています。母親・児については産科カルテの転記情報も追加する予定です。そのため、母親の妊娠中の状態が児にどのように関連しているのかを、本人による調査情報に加えて産科医の観点からも詳細に検討することが可能になります。

今後も、長期健康調査を継続しデータの充実と共有を推し進め、日本の医療の基盤を担います。

参考
東北メディカル・メガバンク計画について

東北メディカル・メガバンク計画は、東日本大震災からの復興と、個別化予防・医療の実現を目指しています。ToMMoとIMMを実施機関として、東日本大震災被災地の医療の創造的復興及び被災者の健康増進に役立てるために、平成25年より合計15 万人規模の地域住民コホート調査および三世代コホート調査等を実施して、試料・情報を収集したバイオバンク*8を整備しています。本計画については、平成27年度より、AMEDが研究支援担当機関の役割を果たしています。

用語説明
*1 コホート調査:
ある特定の人々の集団を一定期間にわたって追跡し、生活習慣などの遺伝要因・環境要因などと疾病発症の関係を解明するための調査のこと。
*2 三世代コホート調査:
ToMMoが2013年7月より開始した、妊婦さんと生まれたお子さんを中心にしたコホート調査。2017年3月までに7万人以上の参加者を得ている。世界的に見ても貴重な家系情報付きの大規模コホート調査である。
*3 ベースライン調査:
2013年から2017年にかけて実施したリクルート時の調査。
*4 統合データベースdbTMM:
2016年4 月に発表した、東北メディカル・メガバンク計画で得られた各種の情報を統合したデータベース。膨大なデータから高速で検索するほか、集団を層別化して自動的に統計学的な特徴を付ける等の機能を持つ。
*5 新生突然変異:
親から子供へ継承されるゲノムが、親の生殖細胞系列で複製される際に入り込む突然変異
*6 ゲノムバリエーション:
集団に保有されるゲノム配列の差
*7 連鎖不平衡:
ゲノム上の連鎖している(座位)各2種類の塩基(アレル)について、無作為に期待される以上の偏った組合せ(ハプロタイプ)の存在。
*8 バイオバンク:
生体試料を収集・保管し、研究利用のために提供を行う。東北メディカル・メガバンク計画のバイオバンクは、コホート調査の参加者から血液・尿などの生体試料を集める。
表:当計画により分譲可能な試料・情報

医療・健康細胞遺伝子工学生物環境工学
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました