ネコ由来のエリスロポエチンを用いた腎性貧血治療薬を開発

ad
ad

副作用の少ない治療薬で腎不全ネコのQOLを改善

2021-03-30 科学技術振興機構

ポイント
  • 従来、ネコの重症化した腎性貧血治療にはヒト由来のたんぱく質を用いた治療薬しか選択肢がなかったが、アレルギー反応などの副作用や薬効の低下が問題となっていた。
  • 遺伝子組み換えニワトリ作製技術を用いて、ネコ由来のたんぱく質を利用した腎性貧血治療薬の製造に成功した。
  • 開発した治療薬は薬効時間が長く、副作用も少ないことから、貧血の初期症状段階から継続して投与が可能となり、ネコと飼い主への負担軽減とQOL向上が期待される。

JST(理事長 濵口 道成)は、研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 実用化挑戦タイプ(委託開発)の開発課題「遺伝子組換え鶏技術により生産する貧血治療薬」の開発結果を成功と認定しました。この開発課題は、愛知工業大学 工学部 飯島 信司 教授(開発当時:名古屋大学 教授)らの研究成果をもとに、平成23年11月から令和元年9月にかけて株式会社カネカ(代表取締役社長 田中 稔、本社 東京都港区赤坂1-12-32、資本金330億円)に委託して、同社 バイオテクノロジー研究所にて事業化開発を進めていたものです。

ネコの多くは、加齢によって慢性腎不全を発症します。慢性腎不全になると、腎臓で作られる造血因子のエリスロポエチン(EPO)の分泌が低下し、腎性貧血の症状を引き起こします。獣医療ではこれまで、重度の腎性貧血の治療にはヒト由来のエリスロポエチン(ヒトEPO)を用いた治療薬しか選択肢がありませんでしたが、ネコにとって異種たんぱく質であることから、アレルギー反応などの副作用を引き起こすことが問題となっていました。

本開発では、遺伝子組み換えニワトリ作製技術を用いて、ネコ由来のアミノ酸配列を持つエリスロポエチン(ネコEPO)の生産に成功しました。ネコEPO発現遺伝子を組み込んだウイルスベクターを、ニワトリの有精卵の胚へマイクロインジェクションにより注入することで、卵白成分中にネコEPOが生産されます。卵白から精製したネコEPOにポリエチレングリコール(PEG)化修飾を行い、通常のネコEPOと比べて薬効時間の長いPEG化ネコEPOを効率良く製造する工程を確立しました。開発したPEG化ネコEPOを被験薬として約60例の治験を実施し、有効性と安全性を評価しました。

開発したPEG化ネコEPOは副作用が少ないことから、貧血の初期症状段階から継続してネコへの投与が可能となります。貧血による食欲低下や元気喪失などの症状が改善され、ネコや飼い主への負担軽減およびQOL改善が期待されます。

研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)は大学、公的研究機関などで生まれた研究成果を国民経済上重要な技術として実用化し社会に還元することを目指す技術移転支援プログラムです。

研究成果最適展開支援プログラム A-STEP
研究成果最適展開支援プログラム  A-STEPは、社会経済や科学技術の発展、国民生活の向上に寄与するため、大学や公的研究機関等の優れた研究成果の実用化を通じた、イノベーションの効率的・効果的創出を目的とした技術移転事業です。

詳しい資料は≫

<お問い合わせ先>

<開発内容に関すること>
阪本 浩和(サカモト ヒロカズ)
株式会社カネカ バイオテクノロジー研究所

<JSTの事業に関すること>
沖代 美保(オキシロ ミホ)
科学技術振興機構 産学共同開発部

有機化学・薬学細胞遺伝子工学
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました