染色体は相転移する(A phase transition for chromosome transmission when cells divide)

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2022-08-04 国立遺伝学研究所

染色体は細胞分裂の際、DNAがコンパクトに凝集した構造体で、次世代へ受け渡される遺伝情報そのものです。この染色体は微小管などから物理的な力を受けることで、母細胞から娘細胞へと分配されます。つまり、染色体はこのような力に耐えうる、機械的強度を持つ必要があります。

最近、Vienna BioCenterのDaniel W. Gerlich博士らのグループは、染色体が相転移することによって凝縮し、そのような機械的強度を得ていることを明らかにしました(Schneider et al. “A chromatin phase transition protects mitotic chromosomes against microtubule perforation” Nature (2022) doi: 10.1038/s41586-022-05027-y)。本論文では分裂期染色体においてヒストンがグローバルに脱アセチル化されることでクロマチンの相転移が起き、染色体が凝縮して物理的な力に耐性を持つようになることを報告しています。また染色体凝縮に必須であるとこれまで考えられてきたコンデンシンと呼ばれるタンパク質複合体は、染色体の凝縮そのものには関与しないことも示されました。

ゲノムダイナミクス研究室の前島一博 教授は本論文に対する解説論文をNature誌のNews & Views欄に執筆しました。前島教授は本論文への解説と共に、ヒストンの脱アセチル化がどのように染色体の凝縮を引き起こすのか?を議論し、また、棒状の染色体を形作るためのコンデンシンの役割(クロマチンループ形成メカニズム)を考察しています。

図:細胞分裂時、染色体は分配される際、微小管などから物理的な力を受ける(図左)。
a) 薬剤処理でヒストンがグローバルにアセチル化された分裂期染色体は、物理的な力への耐性を失い、微小管によって貫通されてしまう。
b) コンデンシンを失くした染色体は異常な形状を示すが、機械的強度に変化はない。
c) 制限酵素AluⅠによってDNAが断片化されると、染色体は球状の「液滴」へと変化する。この時も微小管に対する機械的強度に変化はない。


A phase transition for chromosome transmission when cells divide
Kazuhiro Maeshima
Nature 2022 August 03 DOI:10.1038/d41586-022-01925-3

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