琵琶湖流域におけるカワリヌマエビ類の実態を解明~1世紀ぶりの在来種の発見と外来種の分布拡大を報告~

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2022-08-31 京都大学

大貫渓介 理学研究科博士課程学生と福家悠介 同博士課程学生は、滋賀県では絶滅したと考えられていたミナミヌマエビ(ヌマエビ科カワリヌマエビ属)を琵琶湖流入出河川から再発見しました。滋賀県におけるミナミヌマエビの記録は1915年が最後で、約1世紀ぶりの発見となります。その一方で、近縁の外来種シナヌマエビが琵琶湖内や周辺河川に広く定着していることと、在来種ミナミヌマエビと交雑している可能性が高いことが遺伝的・形態的解析から明らかになりました。

本研究では、琵琶湖とその流入・流出河川で採集されたカワリヌマエビ類の遺伝情報を取得し、集団の特徴を調べました。また、在来種と外来種を判別できるとされている形態形質について、定量的なデータを取得し、1915年に琵琶湖から採集されたミナミヌマエビの標本も含めて比較しました。

在来種と外来種は遺伝解析により明瞭に区別することができましたが、これまで種判別に用いられてきた形態形質だけでは両種を完全には判別できないことがわかりました。今後、各地の集団が在来種か外来種を確実に判別するためには、DNA分析が必要になると考えられます。

本研究成果は、2022年8月13日に、国際学術誌「Conservation Genetics」にオンライン掲載されました。

琵琶湖流域におけるカワリヌマエビ類の実態を解明~1世紀ぶりの在来種の発見と外来種の分布拡大を報告~
本研究の主役、ミナミヌマエビ Neocaridina denticulata のオス個体(撮影:福家悠介)

研究者のコメント

「東京に住んでいた中学生の頃、遊び場だった湧水にシナヌマエビが侵入し、急激に数を増やすのを間近に見てきました。日本各地に侵入している外来カワリヌマエビ類の在来種への影響はまだよく分かっていません。この研究をきっかけに、外来カワリヌマエビ研究が進展していけばと思います。」(大貫渓介)

「カワリヌマエビ類は外来種の移入と同定の難しさによる取っ付きづらさからか、研究者人口が大変少なく、端的に言えば空きニッチとなっています。外来種問題だけでなく、生物地理学や生態学的にも大変興味深い生き物なので、研究対象として今後さらに注目されて欲しいと思っています。(福家悠介)

詳しい研究内容≫

生物環境工学
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