八重山諸島(石垣島と西表島)に生息する日本最大のヤスデであるヤエヤママルヤスデを新種記載

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2023-01-19 京都大学

加藤大河 理学研究科大学院生、中野隆文 同准教授、島野智之 法政大学教授(環境省レッドリスト委員)、高野光男氏(元環境省レッドリスト委員)は共同で、2023年に日本最大のヤスデであるヤエヤママルヤスデ(ヤスデ綱)を新種として記載しました。ヤスデ(ヤスデ綱)は、ムカデなどと共に多足亜門を構成しています。ムカデは一般に他の小動物を捕食するため顎肢に毒をもつことが多いのですが、ヤスデは落ち葉などの腐植などの有機物を餌としており、動きも比較的ゆっくりで毒をもつ顎肢を持たず咬まれることはありません。

ヤスデの英名はmillipedeであり、ラテン語で千(milli)の脚(ped)に由来するように、多足亜門の中でも体節が多く、1節あたり2対の脚をもっているのが特徴です。

これまで和名「ヤエヤママルヤスデ」と呼ばれてきたマルヤスデ属Spirobolusの未記載種は、沖縄県・八重山諸島の石垣島と西表島、およびその間にある小浜島から記録されており、環境省版レッドリストに掲載され、絶滅危惧II類 (VU)とされながらも、分類学的位置づけは長らく未解決でした。

しかし、本種の保全を考える上で、分類学的に明確にすることは必要であるため、本種の分類学的研究を行いました。

本論文では、形態学的および分子生物学的アプローチにより、ヤエヤママルヤスデの分類学的位置づけを検討しました。形態では、雄の生殖に関わる脚の特徴、雌の生殖器官の特徴で中国大陸や台湾の固有種とは異なっていました。核の28SリボソームRNA遺伝子、ミトコンドリアのCOI遺伝子及び16SリボソームRNA遺伝子の部分塩基配列の情報はSpirobolus属に所属している事を示唆しました。これらの情報に基づいて、本種ヤエヤママルヤスデをSpirobolus akamma Kato, Takano, Nakano and Shimano, 2023として新種記載しました(学名読み:スピロボルス・アカンマ)。

本種は、体長6.5cm~7.5cmでありヤスデ類としては日本最大。学名のakamma「赤馬(あかんま)」は、ヤスデの脚がたくさんの馬が駆ける様に動くことから「馬陸(やすで)」とよばれることと、本種が赤と黒の体色の美麗種であること、そして赤馬節として歌に歌われる八重山諸島の民話に由来しています。1670年頃の話で、おめでたいときに歌われる歌ではありますが、主人のことを慕う従順な赤い馬の悲しい物語でもあります。

本種は現地でも個体数が減少しており、今後、ますます保全の対象として、重要かつ貴重な種となります。

本研究成果は、2023年1月12日に、「Species Diversity(スピーシーズ・ダイバーシティ)誌」に掲載されました。

八重山諸島(石垣島と西表島)に生息する日本最大のヤスデであるヤエヤママルヤスデを新種記載
ヤエヤママルヤスデ(写真:島野智之)

研究者のコメント

「石垣島ゆかりの赤馬節にちなんで名付けた本種の種小名akamma。この学名がひらめき、中野さんにその案(最初はakanmaでした)を提示した際、その綴りについて、「八重山方言の辞書で、赤馬の音を正確に調べたら良いよ」とご教示をいただきました。現地ゆかりの言葉を借りるのですから、その文化を尊重できたらと思いを致しました。八重山の皆さん、そして全国の皆さんが、本種に親しみを感じ、その保全のために温かく見守っていただけたら幸甚です。」(加藤大河)

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:中野 隆文

生物化学工学
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