2023-02-24 京都大学
伊藤能永 医生物学研究所教授と、Kai Wucherpfennig Harvard Medical School教授らの研究グループは共同で、T細胞からのサイトカインに対する感受性を高めることが難治性がんに対する新規治療戦略となりうることを明らかにしました。
がん組織内のがん細胞の多様性は、免疫療法を含むがん治療における大きな障壁となっています。例えばT細胞は、がん細胞表面のMHC-I分子に提示されたペプチドを認識しがん細胞を殺傷しますが、それが選択圧となってMHC-I欠損抵抗性がん細胞の増殖を促します。本研究では、T細胞によるMHC-I欠損抵抗性がん細胞の殺傷を可能にする分子経路がないか、ゲノムワイドCRISPRスクリーニングを用いて探索しました。その結果、オートファジーとTNFシグナル経路を新規標的として見出しました。これら経路の阻害により、MHC-I欠損がん細胞がT細胞由来サイトカインに対して感受性化しアポトーシス死することを示しました。
本研究成果は、2023年2月22日に、国際学術誌「Cancer Discovery」にオンライン掲載されました。
T細胞サイトカインに対して感受性化し抵抗性がんを制御する
研究者のコメント
「治療抵抗性の克服は、がん制圧のための非常に重要なテーマです。がん細胞は体内で急速に進化し、多様性を獲得します。免疫系は元々多様な病原体への対応に優れており、うまく利用することができれば、現在よりもさらにさまざまながんの制御が可能になると考えられます。本研究はそのような試みの一つですが、このような挑戦に興味のある方の参加をお待ちしています。」(伊藤能永)
研究者情報
研究者名:伊藤 能永