アオコ感染性広域・狭域宿主ウイルスの動態~アオコとウイルスはいかに共存するか~

ad

2023-02-24 京都大学

ミクロキスティスは光合成を行う細菌、シアノバクテリア(ラン藻とも呼ばれている)の一種です。肝臓毒生産能を有し、世界中の湖沼で異常増殖してアオコを形成するため、極めて重要な生物種と見なされています。シアノバクテリアも日々ウイルスの感染を受けています。とりわけ本種はゲノム上に多様なウイルス耐性遺伝子を有し、環境中で多種多様なウイルスと相互作用すると考えられてきました。森本大地 農学研究科(現:JSPS特別研究員PD)と吉田天士 教授らは、先行研究で環境から抽出したDNAを解読する技術(メタゲノム解析)を用いて、様々なミクロキスティスに感染する広域宿主ウイルスと特定の細胞だけに感染する狭域宿主ウイルスを世界に先駆けて見出しました。本研究では、これら異なる宿主域を持ったウイルスを個別に定量する手法を確立し、環境でウイルスとミクロキスティスを調査しました。その結果、狭域宿主ウイルスは調査期間中に存在量が変化しないのに対し、広域宿主ウイルスは本種全体の生物量増加に伴い存在量が増加しました。また、ミクロキスティス種内で同一の遺伝的性質を持った集団(個体群)の組成は大きく変動していました。広域宿主ウイルスの感染が蔓延するにも関わらず、ミクロキスティスがアオコの状態まで生物量を拡大・維持可能なのは、その卓越したウイルス耐性機構に依ることが強く示唆されました。

本研究成果は、2023年1月23日に、国際学術誌「Applied and Environmental Microbiology」にオンライン掲載されました。

文章を入れてください
(A)京都市広沢池で発生したミクロキスティスのアオコ
(B)サンプリング期間を通じて狭域宿主ウイルス(緑線)はほとんど存在量が変化せず、広域宿主ウイルス(赤線)は全体の生物量増加に伴って存在量が増加した。また、アオコは一様な集団に見えるが、遺伝子配列の違いで”見る”と、個体群の組成が大きく変動していた。

研究者のコメント
「環境中での細胞密度が高くなると、高頻度にウイルス感染を受けますが、ミクロキスティスはそれを乗り越えアオコを形成します。本種はゲノム上にウイルス感染履歴を遺すため、直接ウイルスとの相互作用を“見る”ことができます。この特徴から、本種は細菌とウイルスがなぜ高頻度接触下で共存できるのかを解明する上で大きな鍵となる生物だと考えています。両者の関係性をより深く探っていきたいと思います。」(森本大地)

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:吉田 天士

ad

生物環境工学
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました