子どもの先天性心疾患発症に関する母親のリスク因子が明らかに 妊娠初期のビタミンAサプリメントの摂取は発症の可能性を高める ~日本の約10万組の親子のエコチル調査より~

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2023-09-05 国立成育医療研究センター

国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)臨床研究センター データサイエンス部門の小林徹、朴慶純、岩元晋太郎、横浜市立大学エコチル調査神奈川ユニットセンターの河合駿、伊藤秀一らの研究グループは、日本小児循環器学会と協同で全国約10万人のエコチルデータを用いて母子ペアを妊娠中から3歳まで追跡調査しました。
その結果、子どもの先天性心疾患発症に母親の妊娠初期のビタミンAサプリメント摂取、バルプロ酸内服、降圧薬内服、先天性心疾患の既往、母親の年齢、妊娠中期のヘモグロビン血中濃度(貧血の指標)が関連することを明らかにしました。これらの先天性心疾患発症と母親のリスク因子との関連性は日本人の大規模母子コホートでは初めて見いだされました。
特に妊娠初期の女性、また妊娠を考えている女性においても、ビタミンAを含むサプリメントの摂取は控えることが推奨されます。
本研究成果は、国際的な学術誌「Journal of the American Heart Association」に掲載されました。(2023年8月29日)

子どもの先天性心疾患発症に関する母親のリスク因子が明らかに 妊娠初期のビタミンAサプリメントの摂取は発症の可能性を高める ~日本の約10万組の親子のエコチル調査より~

プレスリリースのポイント

  • これまで日本では、妊娠期の女性の生活習慣と子どもの先天性心疾患発症の原因について十分に検討されておらず、今回は日本人の大規模母子コホートで初めての研究結果となります。
  • 子どもが先天性心疾患を発症する調整オッズ比は、妊娠初期の母親のビタミンAサプリメント摂取で約5.8、バルプロ酸内服で約4.9、降圧薬内服で3.8、先天性心疾患の既往歴で約3.4、母親の年齢40歳以上で約1.6、妊娠中期のヘモグロビン血中濃度(貧血の指標)で約1.1でした。
  • 妊娠中の食事からの栄養摂取状況や社会経済的背景との関連は認められませんでした。
  • 妊娠初期や妊娠を希望する女性はビタミンAサプリメントの摂取を控えることが勧められます。

研究の内容と結果

2011年1月から2014年3月にエコチル調査に参加した妊婦とその子ども、91,664ペアを対象にしました。
母親の妊娠中から行っている自記式アンケートと医療者へのアンケートを利用し、3歳までの先天性心疾患診断と母体環境因子の関連について疫学的に分析を行いました。
先天性心疾患を持っていた子どもは1,264名(1.38%)で、そのうち心室中隔欠損症や心房中隔欠損症などの単純型先天性心疾患は1,039名(1.13%)、ファロー四徴症や単心室などの複雑性先天性心疾患は181名(0.18%)の頻度でした。
妊婦の食事による栄養摂取や、学歴・収入などの社会的背景が子どもの先天性心疾患発生リスクと関連を示さなかった一方、図に示す6つの因子が子どもの先天性心疾患発症リスクにそれぞれ関連することが明らかとなりました。特に妊娠初期にビタミンAサプリメントを摂取する妊婦は非摂取の妊婦と比較すると子どもに先天性心疾患が発症する調整オッズ比が約5.8と高値を示しました。

発表論文情報

タイトル:Association between maternal factors in early pregnancy and congenital heart defects in offspring: the Japan Environment and Children’s Study
執筆者:河合駿1) 、岩元晋太郎2)、朴慶純2)、川上ちひろ1)、犬塚亮3)、前田潤4)、古谷喜幸5)、上砂光裕6)、高月晋一7)、上田知実8)、山岸敬幸9)、伊藤秀一1)、小林徹10)
所属:
1)横浜市立大学附属病院小児科
2)国立成育医療研究センター 臨床研究センター 生物統計ユニット
3)東京大学医学部小児科
4)東京都立小児総合医療センター循環器科
5)東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患科
6)日本医科大学多摩永山病院小児科
7)東邦大学医療センター大森病院小児科
8)榊原記念病院小児循環器科
9)慶應義塾大学医学部小児科
10)国立成育医療研究センター 臨床研究センター データサイエンス部門
掲載誌:Journal of the American Heart Association
DOI:10.1161/JAHA.122.029268

本件に関する取材連絡先
国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

医療・健康
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