インスリン細胞の数を調節する新たな仕組みを解明 ~増えた細胞が食べられて減ることで出産後の血糖値を正常に保つ~

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2023-09-19 東北大学

大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野 准教授 今井淳太

【発表のポイント】

  • 妊娠中のマウスで増えたインスリン細胞が、産後にマクロファージ注1によって食べられることで元の数に戻ることを発見しました。
  • その際、インスリン細胞がマクロファージを呼び寄せ、自ら食べられて減ることにより、出産した母親の血糖値が下がりすぎないように保たれるよう調整されていることがわかりました。
  • 体の状況に応じてインスリン細胞の数を調節し、血糖値を正常に保つ仕組みの解明や糖尿病の予防法・治療法の開発が進むことが期待されます。

【概要】
膵臓(すいぞう)のβ細胞注2は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを産生する唯一の細胞です。糖尿病はβ細胞が減少することで血糖値が上昇して発症します。これまで、妊娠中にはβ細胞が増え、出産後に速やかに元の数に戻ることが知られていましたが、どのようにして元の数に戻るのかはわかっていませんでした。

東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野および東北大学病院糖尿病代謝・内分泌内科の今井淳太准教授、遠藤彰助教、片桐秀樹教授らのグループは、妊娠中に増えたβ細胞が、他の細胞を食べる働きを持つマクロファージによって食べられる(貪食される)ことによって元の数に戻ることを発見しました。また、出産直前には、β細胞が血液中のマクロファージを呼び寄せる物質を放出して膵臓のマクロファージを増やすことにより、この仕組みを進めていることも明らかにしました。さらに、この仕組みによって妊娠中に増えたβ細胞を速やかに減らすことで産後の母親の血糖値が下がりすぎないように維持されていることもわかりました。

今回の研究成果により、体の状況に応じてβ細胞の数が調節され、血糖値が正常に維持される仕組みの解明や、糖尿病の予防法・治療法の開発が進むことが期待されます。

本研究成果は、2023年9月15日午前11時(現地時間、日本時間9月16日午前0時)にDevelopmental Cell誌に掲載されました。

図1 出産後の膵ランゲルハンス島ではマクロファージが増えている。
*有意差あり **大きな有意差あり

【用語解説】
注1.マクロファージ:体内に侵入した細菌や異物、死んだ細胞やその破片などを捕食し消化する、体内の掃除屋の役割を担う細胞。

注2.β細胞、ランゲルハンス島:血糖値を下げるホルモンであるインスリンを作る体内唯一の細胞。ランゲルハンス島といわれる膵臓の中に多数ある島状の部位に集まって存在する。このβ細胞の働きが悪くなったり、数が減ったりすることで、糖尿病が発症することが知られている。

詳細(プレスリリース本文)

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
糖尿病代謝内科学分野
准教授  今井 淳太(いまい じゅんた)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室

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