多人種解析により心房細動の新しい遺伝子マーカーを同定

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心房細動の詳細な発症メカニズムの解明に貢献

2018-06-12 理化学研究所,東京医科歯科大学,日本医療研究開発機構

要旨

理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長(研究当時)、統計解析研究チームの鎌谷洋一郎チームリーダー(研究当時)、ロー・シュー・キー客員研究員(研究当時)、循環器疾患研究チームの伊藤薫チームリーダー(研究当時)、東京医科歯科大学大学院の田中敏博教授らの国際共同研究グループは、大規模ゲノムワイド関連解析(GWAS)[1]を通じて、心房細動の70個の新しい疾患感受性座位[2]の同定に成功しました。

心房細動は、重症な脳梗塞の原因となる重要な不整脈です。心房細動の環境要因については、疫学研究で十分に検討されてきましたが、遺伝学的要因については、2017年に理研を含む国際共同研究グループにより21個の感受性座位が発表され、合計30個の感受性座位が判明していました注1、2)。しかし、他の循環器疾患である虚血性心疾患(心筋梗塞など)では100個以上の疾患感受性座位が同定されており、それに比べて研究が進んでいませんでした。

それを克服するため、国際共同研究グループは日本人を含む多人種の心房細動患者65,446人と対照者50万人に対してGWASを行い、多数の新しい心房細動の感受性座位を発見しました。その後、左心房のトランスクリプトーム解析[3]を含むオミクス解析[4]を行うことにより、これら感受性座位の遺伝子多型[5]が作用する57個の遺伝子を同定しました。これら遺伝子群は、心臓の分化形成や電気生理学的機能、心筋収縮・形態形成に関わるものであり、心房細動発症の分子メカニズムの全体像を示しています。

今後、本成果を手掛かりに心房細動発症の詳細なメカニズムの解明や、メカニズムに関連した分子ターゲットの発見によって疾患に効果的な創薬につながるものと期待できます。本研究成果は、国際科学雑誌『Nature Genetics』オンライン版(6月11日付け:日本時間6月12日)に掲載されます。

本研究で使用した日本人集団のジェノタイプデータは、科学技術振興機構(JST)バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)を通じて既に公開されています注3)

なお本研究は、文部科学省「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」および日本医療研究開発機構(AMED)「オーダーメイド医療の実現プログラム」の支援を受けて行われました。

注1)
2017年4月18日プレスリリース「心房細動に関わる新しい遺伝子マーカーを同定」
注2)
Christophersen IE, Rienstra M, Roselli C et al. Large-scale analyses of common and rare variants identify 12 new loci associated with atrial fibrillation. Nat Genet. 49:946-952, 2017
注3)
バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)
※国際共同研究グループ
理化学研究所 統合生命医科学研究センター
副センター長(研究当時)久保 充明(くぼ みちあき)
統計解析研究チーム
チームリーダー(研究当時)鎌谷 洋一郎(かまたに よういちろう)
(現 理化学研究所 生命医科学研究センター 統計解析研究チーム チームリーダー、京都大学大学院医学研究科 ゲノム医学センター 准教授)
客員研究員(研究当時)ロー・シュー・キー(Low Siew Kee)
(現 理化学研究所 生命医科学研究センター 統計解析研究チーム 客員研究員、がん研究会 がん研究所 がんプレシジョン医療研究センター グループリーダー)
循環器疾患研究チーム
チームリーダー(研究当時)伊藤 薫(いとう かおる)
(現 理化学研究所 生命医科学研究センター 循環器疾患研究チーム チームリーダー)
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 疾患多様性遺伝学分野
教授 田中 敏博(たなか としひろ)
ブロード研究所/マサチューセッツ総合病院
ディレクター パトリック・エリナー(Patrick T. Ellinor)
研究員 カロリナ・ロセリニ(Carolina Roselli)
背景

心房細動は最も一般的に認められる不整脈であり、心不全や脳梗塞など重篤な病態を引き起こす場合もある重要な疾患です。心房細動発症の環境要因については、疫学研究によって十分検討されてきました。

一方、遺伝学的要因については、2012年に理研を含む国際共同研究グループにより大規模な研究が行われ、6個の疾患感受性座位が同定され注4)、 2017年までに合計30個の感受性座位が報告されました 。しかし、他の循環器疾患である虚血性心疾患(心筋梗塞など)では、100以上の感受性座位が同定されています。それに比べて、心房細動ではその疾患の重要性にもかかわらず研究が進んでいませんでした。

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