疾患の原因となる細胞間相互作用を見えるようにする蛍光技術~がんの転移に関わるタンパク質の同定に成功~

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2023-12-12 自治医科大学

概要

我々の身体組織は、多種多様な30兆個を超える細胞によって構成されています。それらの細胞は細胞膜表面上に提示されたタンパク質や、細胞外に分泌される液性因子を介して相互作用することで、組織恒常性を維持しています。正常組織における細胞間相互作用が破綻すると、疾患の発症やその悪性化が進みます。
そこで、自治医科大学分子治療研究センター循環病態代謝学研究部の口丸高弘准教授、武田憲彦教授と分子病態研究部の西村智教授を中心とした研究チームは、疾患の原因となりえる細胞同士の相互作用を媒介するタンパク質を、数千の候補分子の中から同定する新たな解析手法を開発しました。この解析手法は、sGRAPHIC(secretory Glycosylphosphatidylinositol anchored Reconstitution-Activated Proteins to Highlight Intercellular Connections)と名付けられた細胞間相互作用を可視化する独自の技術と1細胞オミクス解析を組み合わせたもので、細胞間相互作用が関与する疾患メカニズムの解析に幅広く応用が可能です。
研究チームは、sGRAPHICをがんの転移過程を再現したマウスモデルに実装し、がん細胞と相互作用する肝実質細胞を1細胞オミクス解析することで、galectin-3と呼ばれるタンパク質が、がん細胞と肝実質細胞の相互作用を媒介し、肝転移の形成を促す可能性を見出しました。
今後、本解析技術は、がん研究にとどまらず、心炎症の重篤化に関わる免疫細胞群の細胞間相互作用の解明など様々な疾患モデルマウスの解析を通した治療戦略の考案につながると考えています。

本研究は英国科学雑誌Nature Communications(DOI: 10.1038/s41467-023-43855-2)に掲載されました。

自治医大:疾患の原因となる細胞間相互作用を可視化する蛍光技術

図 細胞間相互作用の可視化技術と1細胞オミクスに基づく相互作用因子の探索

論文名、著者名など

論文タイトル: Secretory GFP reconstitution labeling of neighboring cells interrogates cell–cell interactions in metastatic niches

著者: Misa Minegishi, Takahiro Kuchimaru*, Kaori Nishikawa, Takayuki Isagawa, Satoshi Iwano, Kei Iida, Hiromasa Hara, Shizuka Miura, Marika Sato, Shigeaki Watanabe, Akifumi Shiomi, Yo Mabuchi, Hiroshi Hamana, Hiroyuki Kishi, Tatsuyuki Sato, Daigo Sawaki, Shigeru Sato, Yutaka Hanazono, Atsushi Suzuki, Takahide Kohro, Tetsuya Kadonosono, Tomomi Shimogori, Atsushi Miyawaki, Norihiko Takeda, Hirofumi Shintaku*, Shinae Kizaka-Kondoh, Satoshi Nishimura
*corresponding authors

DOI: 10.1038/s41467-023-43855-2
URL: https://www.nature.com/articles/s41467-023-43855-2

その他

詳細は下記をご参照ください。

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