悪性褐色細胞腫に対する新しいアルファ線治療薬候補の安全性をマウスで評価

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新しいアルファ線治療薬候補アスタチン211-MABGの臨床試験に向けて一歩前進

2019-05-09 量子科学技術研究開発機構

概要

放射線医学総合研究所分子イメージング診断治療研究部の須藤仁美主任研究員、東達也部長等は、量子ビーム科学部門高崎量子応用研究所、公立大学法人福島県立医科大学と共同で、悪性褐色細胞腫(がん)に対するアルファ線を放出する治療薬候補の安全性評価をマウスで実施し、予想外の副作用がないことを示し、臨床試験実施に向け一歩前進しました。

悪性褐色細胞腫は副腎髄質に発生する腫瘍で、治療法が未確立であり、新たな治療法が望まれています。QSTでは、がん細胞を殺傷する能力が高いアルファ線を放出する核種アスタチン211(211At)を結合させた薬剤211At-MABGが高い治療効果を示すことをマウスで実証し、2016年にプレスリリースしました。この新しい治療薬候補を早く患者さんに届けるために、臨床試験の実現に向け取り組んでいます。

しかし、アルファ線治療の臨床利用の歴史はまだ浅く、従来のベータ線治療薬とは異なる予想外の副作用が懸念されました。そこで、211At-MABGの安全性評価をマウスで実施したところ、従来のベータ線治療薬でも見られる一過性の体重減少や白血球減少等の副作用は観察されたものの、懸念されたような予想外の副作用はないことが明らかとなりました(Translational Oncology誌に掲載)。これにより、従来のベータ線治療薬と同様に、患者さんの診断画像をもとに適切な投与量を決定することで、副作用を制御して治療できることが示されました。

本成果により臨床試験の実施に向けた懸念材料のひとつが解消され、臨床試験開始に向け一歩前進することができました。今回の知見を活かし、臨床試験をできるだけ早く実現するために、今後も福島県立医科大学と共同で準備を進めて参ります。

掲載論文

Preclinical Evaluation of the Acute Radiotoxicity of the alpha-Emitting Molecular-targeted Therapeutic Agent 211At-MABG for the Treatment of Malignant Pheochromocytoma in Normal Mice. Hitomi Sudo, Atsushi B. Tsuji, Aya Sugyo, Kotaro Nagatsu, Katsuyuki Minegishi, Noriko S. Ishioka, Hiroshi Ito, Keiichiro Yoshinaga, and Tatsuya Higashi, Translational Oncology, Volume 12, Issue 7, July 2019, Pages 879-888,  doi:10.1016/j.tranon.2019.04.008

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